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19960925 小林惟司 『寺田寅彦の生涯』

小林惟司 『寺田寅彦の生涯』
  「ポルケ・ブック・レビュー http://www.booxbox.com/porque/」 より

 小林惟司著『寺田寅彦の生涯』(東京図書 1977)を読みました。帯には「寅彦の生誕100年を飾る初の本格的評伝!!」とあります。
 私の一番最初の寺田読書は高校生のときで、小宮豊隆編『寺田寅彦随筆集』。当時(二十年近く前)読んだ本や好きだった作家を今読み返すことはほとんどないのですが、寺田さんは例外で今も『寺田寅彦全随筆』全六巻の読書中です。
 私は大学時代『徒然草』を勉強したのですが、寺田さんには「徒然草の鑑賞」と題された文章もあります。その一部。「第八十段にディレッタンティズムに対する箴言がある。「人ごとに、我が身にうとき事をのみぞこのめる」云々の条は、まことに自分のやうな浮気ものへのよい誡めであつて、これは相当に耳が痛い。此の愚な身の程をわきまへぬ一篇の偶感録も此の位にして差控へるべきであらう。」
 うーん、耳が痛いのはこちらのほうだ。

 その時代随一の科学者・文人かつ人格高潔で教養は深く趣味は洗練され、で悪いところのないような寺田さんも、それゆえにストレスがたまり(親しい人には人づきあいが大変と漏らしながら人に会うほどに気を遣う)、師と仰ぐ夏目漱石と同じ病に倒れ早世します。寺田さんほど理知的な人がなぜと弟子の誰もが思うのですが、体に良くないことをわかっていながら、これも漱石と同じく甘い物の暴食をやめなかったようです。
 人間ってよくわかりません。

 なにしろ寺田寅彦の全体像を描き出すのは難しいことにちがいありません。寺田さんぐらいの人間的学問的広さ深さがなければ、寺田さんの全体像を描くことはできないでしょう。でもそういう人がいたとして、そういうものを書く暇を持てないだろうことも確か。
 結局、残された寺田さん自身の文章を読むしかないか、ということで第三巻で中断してた「全随筆」読書を再開した私でした。

#小山慶太さんの『漱石が見た物理学―首縊りの力学から相対性理論まで』(中公新書)は面白いです。当然、寺田さんも登場します。



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