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19961223 斎藤綾子 『ルビーフルーツ』

斎藤綾子 『ルビーフルーツ』
 「ポルケ・ブック・レビュー http://www.booxbox.com/porque/」より

 12月13日、斎藤綾子(1958- )『ルビーフルーツ』(新潮文庫)を読みました。

 私と同じ歳の作者によるポルノです。カバー裏面の宣伝文によると、「激しくセックスに溺れ、こね回されたり、舌を這わせたり、痙攣したりするのが気持ちイイ。愛したり、愛されたりするのは、相手が男でも女でも、SでもMでも心地イイ--。真由美は、マレーバクみたいな婚約者よりも、涙が出るほど佐和子に夢中だ。亜紀は、妻子持ちの男に緊縛されながらも、蓮子の愛撫を忘れない。性の快楽を貪る女性たちの姿をリアルに描いたアヴァンポップな恋愛小説集。

 私のホームページには、好きな本を101冊紹介するページがあるのですが、その先頭にあげてあるのが、この斎藤綾子さんの『愛より速く』です。

 著者紹介文によれば、「1958(昭和33)年、東京生れ。武蔵野美術大学卒業。'81年、在学中より月刊誌「宝島」に連載された、奔放な性の自叙伝『愛より速く』で作家デビュー。

 斎藤さんのその本を、私は1983年2月19日(笑)に読んでいる。当時は今より十倍くらいエッチだったのと、おそらくその彼女の処女作が『ルビーフルーツ』に比べやはり十倍くらいエッチだったことで、印象に強く残りました。101冊の先頭に置いた所以です。
 開高健さんがどこかに書いてましたが、処女作にその作家のすべてがあらわれる、そういう典型でしょう。そして、処女作があんまりすぐれていると、次が大変みたいです(第二作は十年近いブランクの後に出されたとか)。

 『愛より速く』がどれほど「自叙伝」なのかはわかりませんが、「リアル」であることは確かです。それとは対照的に、『ルビーフルーツ』の弱点は、作者が想像力を駆使してしまっているところですね。
 スッチーとレズ関係にある婦人警官が二人で闖入者の男をあっさり殺してしまったり、バリ島八百比丘尼(びくに。人魚の肉を食して八百年の命を得たという北陸地方に伝わる伝説上の女性。杉浦日向子さんの本や柳田国男さんの本にも出てくる。まあ妖怪みたいなものか)が集合したりで、逆に物足りなかったりする。カバー裏面の宣伝文句は「嘘」ですね。
 生身の人間の生身のそれのほうが、「リアル」に迫ってくる。

 『愛より速く』はまた、女性問題の研究家上野千鶴子さんの支持も得たようです。『ルビーフルーツ』巻末の文芸評論家斎藤美奈子氏の解説によれば、あの小林信彦さん(『<超>読書法』)や匿名書評家「狐」さん(『野蛮な図書目録』)の好意的評価も紹介されています。一方で、すが(糸へんに圭)秀実という批評家の「この程度で「作家」--それもフェミニスト的な--を名のれるなら、女子大生もOLもどんどん作家になれるだろう。」(『それでも作家になりたい人のためのブックガイド』)という批評もあるらしいです。
 確かに『愛より速く』以上のものを提出できないと、つらいかなあとは思います。同じ年に生れた人間として、さらなる「エッチ」を期待したいところです。

 余談。
 文庫カバーの影絵は、相当エッチです。「装画 Terry Johnson」となっていますが、これはおそらく湯村輝彦さんのことですね。「立見」をおすすめします。



斎藤綾子の本
 『愛より速く』
 『ルビーフルーツ』 新潮文庫 1996
 最新刊は
 『ヴァージン・ビューティ』だそうです。


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