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19970210 瀬名秀明 『パラサイト・イヴ』

瀬名秀明 『パラサイト・イヴ』
 「ポルケ・ブック・レビュー http://www.booxbox.com/porque/」より

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 1月29日、『パラサイト・イヴ瀬名秀明(角川ホラー文庫)を読みました。

 現在映画封切中の、単行本・文庫本あわせ百数十万部売れたという、「自然科学」系ベストセラー。
 宿主細胞とミトコンドリアの共生関係について初めて知ったのは、ライアル・ワトソンの『生命潮流』を読んででした。
 酸素を使い高いエネルギーを産出する好気性バクテリア、ミトコンドリアの祖先、が、嫌気性で酸素が毒になってしまうバクテリアの中に入りこみ、共生をはじめる。そんなような、アメリカの女性科学者(その人の名が出てこない・・・・)の仮説、今は大方の支持を受けている、をワトソンさんが、その著書の中で紹介していたのです。
 ということで、われわれの細胞の一つ一つに、ミトコン君が入っている。その共生関係はすでに相当強固なものになっていて、たとえばミトコン君はもはや自分の意志では勝手に増殖できない。なぜなら自己増殖の遺伝信号まで、宿主細胞の核遺伝子に組み込んでしまったから。
 ところが、そのミトコン君が「意志」を持って、より深く宿主の遺伝情報に係わり、よりミトコン君に都合のよい生物を作りあげようとする・・・・、が・・・・、というのが『パラサイト・イヴ』のモチーフ。

 ぼろが出ないうちに、話を変えます。
 作者は執筆当時から現役の研究者。ミトコン君系に造詣があり、現実に自分の置かれた環境をフィクションの中に組み込む(これこそ共生か?)ことで、細部までリアルな作品を作り出しています。これはまあ役得というものでしょうか。
 が、しかし、それゆえに日本ホラー小説界のザ・ナック(君は『マイ・シャローナ』を知っているか?)になりかねないのでは、とも思えます。
 次回作の主題は、瀬名さんの専門外「脳」だそうです。

 ところで、最初のほうで、柳田邦男さんの『犠牲』が「組み込まれ」ているように感じたのは、私だけでしょうか?
 (もっとも、巻末の「参考文献」にはその書名があげられていますが。ふたたび、これこそ共生か?)



 『パラサイト・イヴ』 瀬名秀明(1968-  ) 角川書店「角川ホラー文庫」 1996 800円 ISBN4-04-340501-4 C0193

 『生命潮流』 ライアル・ワトソン(1939-  )
 『犠牲(サクリファイス) わが息子・脳死の11日』 柳田邦男 文芸春秋 1995


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