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19970217 水木しげる 『ゲゲゲの鬼太郎』

水木しげる 『ゲゲゲの鬼太郎』
  「ポルケ・ブック・レビュー http://www.booxbox.com/porque/」 より

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 2月9-15日、『ゲゲゲの鬼太郎水木しげる(ちくま文庫 全7巻)を読みました。
 現実逃避です。しかし、面白かった。

 水木さんのインタビューが載っていると知って、ひさしぶりに雑誌「ダカーポ」を買いました。
 アトムの再登場もなくなり、ドラえもんも片肺になったいま、戦後日本の漫画三大ヒーロー(私見。皆様、異論はおありでしょうが)の中でも、一番うさんくさく希望に満ちていない雰囲気を持った鬼太郎(と目玉のおやじ、あるいはねずみ男)が、一番その人気と寿命を保っているのを見るのは、不思議な感じがします。
 インタビューでも、水木節は健在です。一部を引用しますと。
「人間の教育はだいたい実用的なことばかり教えるから、こういう話は唐突に聞こえるけどね。例えばダーウィンの進化論を同時に発見したウォーレスっていう人がいるんです。その人は、進化論を発見したけども、それと同時に、そういう目に見えない霊がいて、それを研究しないと進化論は分からないと主張するんです。大昔から宇宙の知性体みたいものがいて、それが妖怪とか妖精とかいう、なんとなく感じるものがあって、進化っていうのは、そういうものの介在があるってことを言うわけですよ。大学者がそんなこと言っちゃいけないんじゃないか、ということが言われたわけだけど、ウォーレスは『いや、事実は頑固である』って、彼はそれを否定しなかったわけです。彼もね、年とってから発見したんです。この水木さんもそうなんです(笑)。70歳くらいになってから確信するようになったんですから」(「ダカーポ」No.367 1997.2.19号 94ページ)。
 そう、手塚さんは70歳まで生きられなかった。

 第七巻「妖怪花」には親切にも、初出誌一覧が付いていて、それによりますと、『ゲゲゲの鬼太郎』がかかれていたのは、1965年から1978年にかけて。60年代は「少年マガジン」、70年代は「少年サンデー」に掲載されていたようです。
 私は、漫画雑誌で読んだ記憶はないのですが、TVアニメは大好きでした。前出のインタビュー記事によれば、昨年からまたTV放映されているらしい。
 鬼太郎(と目玉のおやじ、あるいはねずみ男)のどこが、われわれの心をそれほど深くとらえるのでしょうか。
「科学の子」アトムの存在の有り様、科学進歩礼賛的な、が一種時代遅れになってしまったのに比較して、「霊的世界の子」鬼太郎がその命脈を保ち続けるのは、なぜでしょう。

 各巻末に、鬼太郎ファンの解説がつくのですが、第三巻「妖怪大戦争」で登場するのが、佐野「抗菌トイレは汚れに強い」史郎さん。その鋭い分析。
「--そうか、やはりアトムは宇宙の彼方から地球を観つづけ、鬼太郎は地の底から這い出して地球を味わっているのだな。」
 第四巻「妖怪獣」、とり・みき解説。同業者ならではの分析。
「四○年の間には当然いろんな漫画の流行すたりがあったわけだが、水木漫画は常にそういう世俗の流行から超然としており、いつの時代もその作風はワン・アンド・オンリーだった。またその時々の人気新人の作品にも目を配り、少なくとも表層的にはその作風を変え続けることで最後まで第一線の作家だった手塚治虫と比べると、まことに対照的といわざるをえない(実際に妖怪ブームは手塚に名作『どろろ』を描かせる原動力となった)。どちらがいい悪いではなく、二人とも正反対のベクトルながらそれぞれ究極まで達しているのだ、水木漫画は不変であることで普遍を勝ちとっているのである。」
 第五巻「妖怪大統領」、南伸坊さんの解説。「ガロ」一九九一年九月号掲載分の転載のようです。
「大体が、ガキ大将になるような人(水木さんは実際にコドモの頃ガキ大将だった)は、頭のよさが、世間知の方に働いて、常識的の大人になりおおせる人が一般で、もちろん、それはそれでいいのだが、ガキ大将の頃にもっていたイキイキした部分を失なってしまう人が多いものだ。水木さんは、大人になってもガキ大将の魅力を持ちつづける稀有な、元ガキ大将であると私は思っている。」

 さて。
 鬼太郎を本棚に収め、厳しい現実に立ち返るとしよう。
 がしかし。
 私の娘が順調に育ったあかつきには、父親の本棚の鬼太郎(と目玉のおやじ、あるいはねずみ男)に出会い、その世界にずっぽりはまってしまうであろうこともまた現実なのではないかと、私は思うわけです。



 『ゲゲゲの鬼太郎』 水木しげる(1922- ) ちくま文庫 1994

 水木さんの「人間」がそもそも面白いのだと気付かされる自伝:
 『ねぼけ人生』 ちくま文庫 1986
 文字通り不思議なエッセイ集:
 『不思議旅行』 中公文庫 1984
 いずれも、戦場での体験談は出色です。

 ベストセラー:
 『妖怪画談』 岩波新書 1992

20050830 水木しげる=ユング説・亮さんのビリンバウケース・スエイ日記

19980706 水木しげる 『劇画 ヒットラー』

19980108 足立倫行 『妖怪と歩く』

19971126 水木しげる 『猫楠 南方熊楠の生涯』

19970217 水木しげる 『ゲゲゲの鬼太郎』



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