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19970227 夏目漱石 『それから』

夏目漱石 『それから』
ポルケ・ブック・レビュー http://www.booxbox.com/porque/」より

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 2月24日、『それから』(夏目漱石、角川文庫クラシックス)を読みました。
 今月初めの日曜の朝、森田芳光監督の映画『それから』(1985年公開)をTVで見たのが、「いまさら本」読書のきっかけです。たいへん優れた作品で、その年の映画賞をたくさんとりました。原作を読みたいと思い続け、宿願がかなったのが、封切で映画を見てから十二年の後。私も相当のんきです。

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 夏目漱石とその作品については、偉い先生方がすでに十分ご研究されているわけで、私がどうこう言ってもしょうがない。書けるわけがない。
 ということで、「名付け」の話。
  『それから』との最初の出会いは、高校の国語の教科書。ダイジェスト版でした。
 たまたま同じクラスに、ヒロイン三千代さんと同じ名前の女の子がいて、なんでも『それから』ファン(?)のお父さんが、自分の娘にその名前を付けたのだとか。
 今回、初めて全編を読み、改めて、自分の娘にこのヒロインの名前を付けるかなあ、と考えてしまいました。『それから』の「そのからの三千代さん」の生が、幸せなものであったと想像する人だけに為しえるわざでしょう。クラスの三千代さんは、今どうしてらっしゃるのでしょう。
 余談。私の娘は「緑」という名前です。五月下旬に生まれたのですが、私たちの住む、また娘の生まれた、大阪千里はその時期素晴しく緑が美しいので、単純に「緑」にしてしまいました。田原緑。なんと「みどみど」した名前でしょう。赤井さんとか黒井さんとか白井さんとか青井さんとかと結婚したら、「いろいろ」した名前ですね。今から、娘に自分の名前の由来を聞かれたら、『ノルウェイの森』の「緑」さんからとったと誤魔化そうと今から思っている私は、親ばかというものでしょう。
 さらに余談。その「本名」村上春樹さんですが、デビュー直後、編集者の人に「ペンネーム考えたほうがいいんじゃないですか」といわれたそうです。彼のデビュー当時は、村上龍角川春樹という相当濃い二大「村上・春樹」がいましたから。がしかし、今、「村上」といえば龍さんより春樹さんを思う人が多いでしょうし、ましてや「春樹」にいたっては。

 季節は巡り、池澤夏樹さん(この方も本名だそうです)の『読書癖』を読んでいるのですが、「命名の苦労」という文章がありました。ちょっと引用です。
 「日本人は子供が生まれるたびに誰でも詩人になる。新生児に対する命名は祝福であると同時に祈願でもある。親はさまざまな願いを込めて名をつけるが、これは実に高度な、象徴的な言葉の用法だ。それを誰もがやらなくてはならない。」
 こないだの日曜日、朝日新聞のコラムには、中江丑吉のことが書かれてました。色気もなにもない名前ですが、父中江兆民が、たいそうな名をつけても本人の負担になるなるだけだといって、車夫になっても恥ずかしくないものにしたのだそうです。一つの見識でしょう。
 しかし、いくら今年が丑年とはいえ、やはり「丑吉」とはいかないのが一般的なわけでして、今日の大阪毎日放送のラジオによりますと、昨年(子年でしたが)新生児に付けられた名前で一番多かったのは、男の子の場合「翔太」であるとのこと。
 時代の閉塞感を、逆に、物語っているかのような名前。
 ふたたび池澤さん「命名の苦労」から。
 「いずれは名前を聞いただけで何年ごろ生まれた人かわかるようになるのではないか。名前として許容される文字や言葉が増えて選択の幅が広がったわけだが、はっきり言えば、人の名が商品名のようになってしまった。少なくともぼくが知るかぎりこれは日本だけの現象である。」

  売れそうな名前か。
 『それから』という題名は、絶妙。



 『それから』 夏目漱石(1867-1916) 1909

 『ノルウェイの森』 村上春樹(1949- ) 1987 講談社
 『読書癖2』 池澤夏樹(1945- ) 1991 みすず書房



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