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19970303 池澤夏樹 『読書癖1』

池澤夏樹 『読書癖1』
 「ポルケ・ブック・レビュー http://www.booxbox.com/porque/」より

 2月26日、『読書癖1』(池澤夏樹、みすず書房)を読みました。

     *

 1945年北海道は帯広生まれ、作家であり翻訳家であり詩人でもあり、旅行家であり自然愛好家であり、本を読む人である池澤さんの本を初めて読みました。「癖」になりそうです。

 この本の題名も絶妙です。
 一生読書を続けていくような人にとって、「読書」はもはや「趣味」の領域でなく「習慣」や「性癖」になっているに違いないわけで、「癖」持ちというのは読書好きを形容する正しい用語でしょう。
 たとえば、私のかばんがいつも重いのは、帰りの通勤どき読むべき本が手元にないことおそれる強迫観念のゆえ。行き帰りの電車でどう考えても読み終わらない分量の本のほかに、ついもう一冊かばんの中に忍ばせてしまう。世のならい、本の余分があるときは時間がなく、何かの拍子に出先でぽっかり時間ができると、手元に読むべきものがない、「癖」ですからそういう状態は耐え難く、ついつい重いかばんを日々持ち歩くことに・・・。
 その手の「癖」持ちにはおすすめです。「癖」がいっそうすすみます。

 内容とはまったく関係ないのですが、本のコストパフォーマンスについても考えさせられる本です。
 みすず書房という、まあ一種のブランド出版社とでもいうべき版元の本ですから、けばいところもなく、字の組み方もゆったりしてて読みやすい、のですがなにせ高い。通勤読書するような人間を読者として想定していないのでしょうが、一冊に収まる分量が二冊になって、各1957円。手元にたまたま立花隆さんの『ぼくはこんな本を読んできた』(文芸春秋)があるのですが、やたら字が詰まっていて一冊1500円。どちらがどうと言いませんが、同じ「本案内」本とはいえ、いろいろな販売戦略があるのだなと思うわけです。
 ディジタル・アーカイブ化がすすみ、モニター画面で「読書」する時間のほうが増えて、天然本の持つ質感・量感のようなものが、逆に貴重になる日が来たりするのでしょうか。質感・量感が均質化された本の読書は、はたして楽しいものかどうか。いやいや、ディジタル本の世界でも、「みすず系」と「量版本系」のすみわけがちゃんとできたりして。

 以前「ポルケ」同人のきーさんI井さんM村さんがわが家にいらしたとき、私を含め揃いも揃って高野文子絶対安全剃刀』のファンだということが判明し変に盛り上がったのですが、その手の奇妙な連帯感を感じられる本でもあります。
 池澤さんと共通する読書体験本を抜き出してみます。

○『ノルウェイの森』村上春樹、講談社
 「純然たる文学作品があんなに広く読まれると、まだ本を読む人がたくさんいるのだとわかって心強い」と池澤さん。
○『20世紀イギリス短篇選』岩波文庫
 「ベイシティーローラーズ」という言葉に、まさか岩波文庫読書で出会おうとは。
○『当世・商売往来別役実、岩波新書
 別役さんの一連のフェイクロジックもの。
○『生命潮流ライアル・ワトソン、工作舎
 「困った本」という題名の文章で紹介されていて、困った。
○『パリの肖像ナダール、立風書房
 十九世紀半ばに活躍した肖像写真家の写真集。
○『老人と海ヘミングウェイ
 私が一番最初に原書で読んだ本。だから中身がよくわかっていない。
○『武器よさらば』ヘミングウェイ
 これも英語で読んだはず。
○『ライ麦畑でつかまえてサリンジャー
 ご多分にもれず、十代のころ、この本に「つかまえ」られたくちでした。
○『シンドラーズ・リストトマス・キニーリー、新潮文庫
 映画見て泣きましたが、本のほうがもっと良かったです。
○『人麻呂の暗号藤村由加、新潮社
 『読書癖』のこの紹介でヒッポファミリークラブを知り、入会してしまった人を、私は知っています。
○『フーリエの冒険』ヒッポファミリークラブ
 私がヒッポファミリークラブに参加するきっかけとなった本。英訳化され、米国のいろんな学校で教科書として使われているそうです。
○『走れナフタリン少年川本三郎
 池澤さん「優れた少年文学論」。渡辺和博さんがカバーの絵を描いてました。



 『読書癖1』 池澤夏樹(1945- ) 1991 みすず書房

 『ぼくはこんな本を読んできた』 立花隆(1940- ) 1995 文芸春秋
 『絶対安全剃刀』 高野文子



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