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19970401 高野文子 『るきさん』

高野文子 『るきさん』
 「ポルケ・ブック・レビュー http://www.booxbox.com/porque/」より

 3月27日、『るきさん』(高野文子、筑摩書房)を読みました。

   *

 前回に続いて漫画です。
 この同報同人にして、市井の「フラクタル」研究家でもある、きーさんことK村H樹さんが、このたび、震災にも遭遇した神戸から千葉のほうに転勤なされます。本来なら、田原のほうが餞別でもお渡しすべきところですが、逆にきーさんから「高野本」二冊をいただいてしまいました。ありがとうございます。
 関東圏でも、是非、「まとりょーしかフィールド」(きーさんたちが企画実行している「フラクタル」勉強会)続けて欲しいものです。
 それにしても、きーさんと田原は同い歳なのですが、高野文子の本をやりとりする三十八歳二人、というのもなんだか漫画的です。
 主人公の「るき」さんは、在宅で医療保険請求計算代行の仕事をする、無茶苦茶若いわけではない独身女性。一月分の仕事を一週間で終わらせ、つまり金銭欲があまりなく、悠々自適、郵便切手収集と図書館で子供の本を読むのが趣味。子供と子供の本を取り合って、譲らない程度に強気。当然、運動神経がない。自意識無過剰の人で、おしゃれにも関心なし、男性にも興味がないらしい(色気もない)。なぜかとても仲のよい、やはり独身の友人えっちゃんは、自意識過剰で洋服(を買うこと)が大好き。
 マガジンハウスの雑誌「Hanako」に連載されていた漫画なのですが、おそらく「えっちゃん」型が多いであろうその雑誌の読者には、逆に新鮮に映ったかも。
 最終回(なんだろうか)では、るきさんはなんと切手市を目当てにイタリアはナポリまで飛び、えっちゃんは家で在ナポリのるきさんの写真、電気炊飯器を脇にお味噌汁と焼魚で食事をしている、をみてるきさんの「在ナポリ」性に疑いを禁じ得ない、という落ち。

 「るきさん」は、前回紹介した内田春菊さんの描く女性像たちと、対極にあります。
 がしかし、内田作品の女性たちも、この「るきさん」も、「こんなタイプいるよなあ」と読み手に思わせるリアルさは、充分に持ち合わせています。優れた表現者だけになし得るわざでしょう。
 高野さんはまた、内田春菊さんのジャンルを超えた多作ぶりに比較すると、寡作の漫画家でもあります。1957年生まれで、1981年に「あの」『絶対安全剃刀』を出し、以後わずか四冊の漫画を刊行するのみ。それでも一定の読者と人気と評価を得続けているわけで、やはり希有の才能というほかない。
 商品入れ替わりの激しい世の中ではありますが、『絶対安全剃刀』は今だに、ちょっとした大きな本屋なら、手に入れることができます。中でも「たなべのつる」は、漫画でしか表現できない世界が確かにあること、そしてそれほど日本の漫画は成熟したメディアである(あった?でしょうか)ことを、われわれに示してくれる、とんでもない作品です。


 『るきさん』 高野文子(1957- ) 筑摩書房1993
   『絶対安全剃刀』 高野文子(1957- ) 白泉社1981

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