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19970408 ディック・フランシス 『興奮』

ディック・フランシス 『興奮』
 「ポルケ・ブック・レビュー http://www.booxbox.com/porque/」より

 4月2日、『興奮』(ディック・フランシス 菊池光訳、ハヤカワ文庫)を読みました。

   *

 ビートルズがライブバンドとしても活躍していたころ、元全英チャンピオンジョッキーが書いた優れたミステリー。
 「競馬ファンがなぜこんなに多いのか」には興味があっても、競馬そのものには興味がなく、ミステリーファンでもない田原が、なぜいまさらこの本を手に取ったのか?

 文庫本の帯についついつられてしまいました。いわく「祝アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞三度受賞 ディック・フランシス・フェア ハヤカワ文庫」はいいとして、キャッチコピー「私もディック・フランシスのファンです。」のもと、ずらりと並ぶ名前。大沢在昌(作家) 岡部幸雄(騎手) 奥島孝康(早稲田大学総長) 野田知佑(エッセイスト) 畑正憲(作家) 宮部みゆき(作家) 森田芳光(映画監督) 大和和紀(漫画家) 養老孟司(北里大学教授) 吉永みち子(エッセイスト)」
 看板に偽りなし、面白かったです。

 昨日、スイスからやってきた「Affront perdu」という三人組のバンドのライブ演奏を聞いてきました。
 二十年近く前、イエローマジックオーケストラをはじめとする「日本のテクノ」華やかなりし頃、デビューした「ヒカシュー」というバンド(今なお活動中)のリーダー巻上公一さんが、向こうの音楽祭で知り合い、日本公演をセッティングしたもので、巻上さんもミラクルボイスを楽器変わりに駆使しての、ジョイントコンサートです。
 はっきり言って、あまり一般的な音楽ではありません。ヨーロピアン・ノイズ・ミュージックとでも申しましょうか。メロディとハーモニーは存在(演奏者には聞こえているのでしょうが)せず、変則的(演奏者には秩序だったものなのでしょうが)なリズムのうねりが延々と続く。
 それでも楽しめた(自分でも意外なほど)のは、演奏者たちの演奏能力の高さによるものです。ドラムス・チェロ・ギターという変則三人組なのですが、特にドラムの Martin Gantenbein さんの演奏がすごかった。
 実は『興奮』を読んで以来、「速度」について考えていまして、Martin さんの高速ドラミングを聞きながら、時代時代にふさわしい速度があるのかなあと漠然と思っていたのでした。

 『興奮』の書かれた時代、テレビのアナウンサーたちは今のニュースキャスターより随分ゆっくり話していた(実際に一定時間内の言葉数の多い少ないの統計結果があるそうです)。映画のテンポにしてもそうでしょう、古典的名作と呼ばれる映画を見て、そののんびりした展開に多少の退屈を感じてしまう。Martin さんの高速リズムはいまでこそ世界中のドラマーが叩きだしているが、『興奮』時のリズムはひねもすのたりであった。スポーツの世界でも、スピード競技の記録は、年々更新され、停滞することはない。そしてなにより、コンピュータネットワークの、爆発する情報量!!
 その一方で、地べたに座りだるそうに話をする若い人たちの存在を見ていると、その存在を許す大人の存在も含めて、日本ではスピード更新の時代は終わったのかな、とも思います。停滞の時代ですか? それともいいように解釈して、成熟の時代?
 ディック・フランシスのミステリー小説は、どうでしょう、この三十年間変わらず『興奮』の速度で書かれているのでしょうか?

 ディックさんの「速度」は、気持ちの良いものでした。
 「私もディック・フランシスのファンです。」


 『興奮』 ディック・フランシス 菊池光訳、ハヤカワ文庫1976 "FOR KICKS" by Dick Francis 1965

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