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19970709 大谷晃一 『大阪学』

大谷晃一 『大阪学』
 「ポルケ・ブック・レビュー http://www.booxbox.com/porque/」より

 6月27日、『大阪学大谷晃一(新潮文庫)を読みました。

   * [大阪学] 大谷晃一

 6月25日から30日まで、大阪におりました。北海道に越してちょうど二か月目の「里帰り」です。
 私は、「珍事」タイガース日本一の年から関西圏に十二年間暮らし、その間「関西系」の女性を現地調達して妻にし、子連れで北海道に「里帰り」しても「家庭内関西弁」を話す、という男です。世界一の歩行速度を誇るとの噂もある大阪人が歩く人ごみでも、なかなか人に追い越されることがなかったという「いらち」です。
 この同報も、改めて数えてみましたら、32名の同人中12名が関西圏にお住まいという、「関西」系でした。

 通勤がなくなり読書量がめっきり減った私が、大阪に着いたらしてみたいと思ったことの一つが「阪急電車内読書」。そのために緑地公園駅の「田村書店」で購入したのが、この『大阪学』でした。阪急電車ではなく、おもに北大阪急行-地下鉄御堂筋線車内で読んだのですが。
 読み終える途中に、文中でも触れられている「適塾」に行ってみたりと、思い出深い一冊となりました。
 著者の大谷さんは、帝塚山学院大学の学長さんで、生粋の関西人。平成六年に発行された本が、今年始め早くも文庫化されたもの。表紙はいしいひさいちさんの漫画、背広の男「あのう、てんまん六丁目ってどっちですか? 教えてくれませんか。」、「イズミヤ」の買い物袋を下げたおっちゃん「ハイ 300万円」。杭全・野江内代・放出・・・、笑えます。帯がすごい、「出張・転勤・商売のお供に 故郷大阪の再発見に 1冊どないだっ!」。なんとなく、関西人が考えたコピーではないような気もするが。

 「文庫のためのやや長い目のあとがき」から、やや長めの引用を。

 「住専問題が起こった。巨額の金を借りて返さないやつがいる。国民は怒った。国会に呼び出された。大阪の末野興産の末野謙一社長は、「大変迷惑をかけてすみません。身を粉にして返済します」と、何度も頭を下げた。いかにも腰が低い。一方、東京の桃源社の佐佐木吉之助社長は、自分に責任はないとして「あんな政策をされたのでは、どんな名経営者でも、ナポレオンでもどうしようもない」といい張る。(中略)
 この正反対の態度が、大阪と東京の人間と文化の差である。どちらも、素直に返済するつもりは毛頭ない。裏では、財産を隠したりごまかすことにやっきになっている。人間の本性は同じことである。しかし、その表面の言行に大きな違いがあることが分かる。東京は面子や体面にこだわり、理屈をこね、たやすく謝らない。これに対し、大阪は簡単にわびて、その場を納める。」

 「九五年のことだが、阪神淡路大震災のテレビ・ニュースを見ていた。震源地の北淡町長が、「さア、こんな時は冗談を言うて大笑いせなあかん」と言うている。家が全滅したおばさんがマイクの前で、「家はないけど、元気はありまっせ」と話している。傾いたビルのオーナーが、「これは自信過剰やったわ」と地震と自信をからませて洒落を飛ばしている。仮設住宅の抽選に外れたおじさんがマイクを突きつけられて、「地震に当たって仮設に当たらん」と口走る。避難所に見舞いに来た村山首相に、おばさんが「来るだけやったらあかんでエ」と浴びせる。こんな光景は、ほかではあまり見られないだろう。この復興は当初考えていたよりも早いだろうと、私はテレビの前で思った。」

 『大阪学』を出版した際、押し寄せた「東京系」マスコミの、不況でも元気で騒がしい大阪の「実態と由来」を知りたい、という質問に対する回答。

 「差し当たり、東京人の疑問に答えておこう。まず第一に、東京には大企業が多い。才覚にたけた大阪人は成功するのだが、大企業になると東京に本社か少なくとも本社機能を移さざるを得ない。大企業は組織と管理で成り立ち、格好をつけ行儀よくし横並びを大事にする。いわば武士的である。不況でももうけている会社もある。だからというて、はしゃげない。それは、はしたない。これに反して、町人の町だった大阪はいつまでも中小企業の町である。シュンとしていたら、「あいつとこはあやしいで」と倒産の疑いをかけられる。だから、もし危なくなったら余計に冗談を飛ばして高笑いをする。それを東京から見ると、騒がしく活気があるように思う。」

 「最後におまけとして、大阪風[人間関係の秘訣7か条]を紹介しよう。グリコ以来、大阪はおまけが好きである。大阪人気質をそのまま利用すれば人間関係がうまく行く。
 1、人見知りせず、明るく大きな声で自分から声をかける。
 2、身分や地位にこだわらず、おじけずえらばらず、同じ態度で接する。
 3、自分の欠陥や弱点や失敗談を平気で披露し、自らを卑下して相手の自尊心を高める。
 4、格好をつけず、建前や見栄をはさまない。
 5、人の話をよく聞き、喜怒哀楽を十分に表現する。迎合せずに、ときには突っ込む。
 6、何んにでも「はる」というインスタント敬語を付けておく」
 7、相手の考えに反対の場合は必ず「それは分かるけど」と応じ、あるいは「ちゃう、ちゃう」と軽い調子でいなす。相手の頼みを拒否するときは「考えときまっさ」と穏やかに断る。友好の雰囲気を壊さない。」

 私は今、自宅の四畳半の部屋に事務机を二つ並べ、その片方の机でコンピュータに向かって仕事しているわけですが、二年前大阪千里は関大近くで生まれた娘も、本人の知らぬ間に北海道に来て、隣の机でお絵描きするようになりました。
 サインペンで机にまで落書きするので、こないだペンを取り上げたのですが、今日同報目的で久々に机の上の『大阪学』を開いたところ、ちゃんと入ってました、娘の赤ペンが。

 さすが関西系、はようから関西の勉強してはる。


 『大阪学』 大谷晃一(1923-  ) 新潮文庫 1997

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