19971124 吉田秋生 『きつねのよめいり』
吉田秋生 『きつねのよめいり』
「ポルケ・ブック・レビュー http://www.booxbox.com/porque/」 より
11月17日、『きつねのよめいり』(吉田秋生
、小学館文庫)を読みました。
同姓同名(読み方は違うらしい)のTVドラマ演出家がおられるようですが、「あきみ」さんは、おそらくは1960年前後に生まれた、女性の漫画家です。
吉田さんは寡作の人です。その分、駄作というものがありません。
この小学館文庫には『カリフォルニア物語』『河よりも長くゆるやかに
』『吉祥天女
』『夢みる頃をすぎても
』『きつねのよめいり』『BANANA FISH
』が収録されています。
『桜の園』(同名映画の原作です)を除く、主だった作品が手軽に読めるわけで、うれしい限りです。
さて、1977年のデビュー作を含む『きつねのよめいり』ですが、たとえば『BANANA FISH』を読むときほどのめり込むことはありませんでした。それは『BANANA FISH』が面白すぎるからで、表題作の「きつねのよめいり」(1982)にしても、すでに後年の吉田秋生のエッセンスが詰まっていて楽しめました。
では、その「エッセンス」とは?
まず、乾いています。「高温多湿」ではまったくない。アメリカや米軍基地周辺を舞台にした作品が多いのは、じめじめした話を描きたがらない作者の意志を反映しているのではないでしょうか。
が、「無味乾燥」ではありません。
人間の感情のひだひだの奥、読者自身がそれまで気付かなかった、触られて気持ちいいところを、巧みに「開発」してくれるのです。赤瀬川原平さんではありませんが、「脳内リゾート開発」されるのです。
以前紹介した、山本昌代さん(本物の1960年生まれ)の『エルンストの月
』(NOVA出版1995)で読んだ「アメリカ映画と吉田秋生」という文章は、この文庫本の巻末エッセイとして収録されていたものでした。
そういえば、山本昌代さんと吉田秋生さんの「乾き方」はよく似ているような気がする。
その乾き方は、昭和三十年代前半生まれの人間に共通するものか、とその年代の私は思ってみたりもするのですが、吉田秋生人気の大きさを見れば、それが単なるノスタルジーであることがよくわかります。
『きつねのよめいり』 吉田秋生 小学館文庫1995
『エルンストの月』 山本昌代(1960- ) NOVA出版1995
「19970906 山本昌代 『エルンストの月』」
蛇足。
昭和五十五年以前の作品に登場する大学生(男たち、大体貧乏で汚いアパート暮らし)は、みなその当時の「ロンゲ」です。
「ぼくの髪が肩まで伸びて、君と同じになったら」(吉田拓郎)から、「就職が決まって髪を切ってきたとき、もう若くないさと君に言い訳したね」(荒井由実
)、の「髪」です。
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