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19971210 赤瀬川原平 『我輩は施主である』

赤瀬川原平 『我輩は施主である』
 「ポルケ・ブック・レビュー http://www.booxbox.com/porque/」 より

 12月08日、『我輩は施主である』(赤瀬川原平 読売新聞社)を読みました。

 広告文によれば、「「路上観察学会」等でお馴染みの赤瀬川氏が、新居建築をめぐる自身の右往左往ぶりをユーモラスに描いた“物件小説”。土地探しや木材の買い付けまで、一切を自前で行おうと奮戦する施主・赤瀬川源左衛門とその妻ニナ。建築史家のF森教授、上棟式にハッピ姿で駆け付けるM伸坊氏らユニークな仲間たちに支えられて「こだわりの家づくり」は進むが……赤瀬川氏の新居は日本芸術大賞授賞の対象作品にもなり、話題性もたっぷり。」
 しかし、「上棟式にハッピ姿で駆け付けるM伸坊氏」というのは嘘です。南さん(ああ実名にしてしまった)は、もっと過激に、町で見かける鳶職の兄さんたちのニッカボッカで登場するのです。

 面白かった部分を3つほど。

 地上の一画に自分の土地と建物を持つにいたるまでの、だんどりの記述。

 賃貸生活者である私は、その手の買い物をしたことがないので、詳しくは知らなかったのですが、土地探し、地鎮祭から上棟式まで、いろんな「儀式」があるようで、それが「路上観察」的に語られます。
 不動産会社のオペラ好きの女性社員や、地元密着不動産業者Y田の親分、廃屋の住人、切り取られる銀杏の木におはらいをする神主等、登場人物も多彩。
 そして結論。「すべての土地は中古品である」。そうか。

 F森教授こと藤森照信さんが強烈。

 「路上観察学会」の実質的リーダーとして、建築に関する圧倒的な知識と「野人・縄文」系の決断力で会を引っ張る(らしい)藤森さんが、この本での「助演男優賞」。
 赤瀬川邸は、「建築探偵」の異名をとる建築史家藤森さんが設計した3つ目の家。2つ目の藤森さんの自宅は、なんと屋根にタンポポが無数に生えている! そして3軒目は、なんと・・・・。
 各章ごとに登場する、藤森さんのイラストがかわいい。

 「手仕事の日本」。

 施主と建築家みずから、長野に入り木材を探し、製材し、運搬し、といういまどき考えられない、家造り。
 ついに施主の芸術家自身が「建築家」の命令で、木材をはつることにまでなってしまい・・・。(「はつる」は漢字で書くと「削る」、少しずつけずり取る、皮などを剥ぐ、の意。)日頃運動不足の「芸術家」が、東急ハンズで買った鉈を手に、「はつり」にハマってしまうくだり、本職の大工さんの前で「芸術家のはつり」を披露する羽目になるあたり、おかしい。
 前回お送りした「人力」の話ではないですが、自分の使うものを自分の手や友人たちの手によって、作り作られていくのは、さぞ気持ちよかろうと羨ましく思いました。
 本当のエコ・ボランティアです。

   後日談。
 屋根に千株のニラのプランターを備えた赤瀬川邸「ニラハウス」は、現実の世界で「日本芸術大賞」を受賞してしまったんだそうです。
 絶妙のオチですね。


 『我輩は施主である』 赤瀬川原平 読売新聞社1997 ISBN4-643-97088-X

蛇足1:
 吉田健一さんに「家を建てる話」という、傑作があります。
 東京の町中に家を建てるにいたった経緯を書いただけなのですが、これが面白い。赤瀬川さんの「家を建てる話」を読んで、吉田版をまた読みたくなりました。
 『三文紳士』という本に収録されています。現在入手可能な本はこちら。

 吉田 健一 著『三文紳士』   講談社文芸文庫よ‐D‐3 講談社1991  ISBN4-06-196152-7

蛇足2:
 地鎮祭といえば、神主さん。当然神道の儀式です。
 以前、京都の桂に住んでいたとき、近所のプロテスタント系の教会の改築工事がありました。
 工事準備でさら地になったときから、あそこの地鎮祭どうやるんだろ、神道?神様のコンフリクトあるんじゃないか? それとも、キリスト教徒の大工さん集めるのかな、と気になってしょうがありませんでした。
 残念ながら、そこの地鎮祭の模様は見逃しました。


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