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19980306 高野文子 『棒がいっぽん』

高野文子 『棒がいっぽん』
 「ポルケ・ブック・レビュー http://www.booxbox.com/porque/」 より

 3月4日、『棒がいっぽん』(高野文子 マガジンハウス)を読みました。

   *

 高野文子さんは1957年生まれの漫画家です。『絶対安全剃刀』という傑作を1981年に発表して以来、その漫画の質からいって爆発的人気を獲得するということはないものの、正当な支持と評価をえつづけているようです。

 1995年に発売されたこの本には、1987年から1994年の間に発表された六つの作品が収録されています。
 私は特に、巻頭に置かれた「美しき町」、初出1987年『プチフラワー』9月号(小学館)、という漫画に深く感銘を受けました。

 40ページのその漫画の舞台は、高度成長期が始まるあたりのどこかの工業団地です。主人公は、一回目の見合いで、その工場に勤める誠実な男性との結婚を決めた、これも誠実そうな女性。
 彼らの日常、休日にはまだ自然の残っている裏山に出かけて夫婦でお昼ご飯を食べたり、団地の一室を使っての労働争議に向けての集会があったり、が紹介され、隣に住む彼らとはちょっと異質の夫婦とのちょっとした軋轢ののち迎える朝で幕を閉じます。

 私は1958年の生まれで、高野さんと同世代なわけですが、その私が思うに、これは1960年代の空気が充満した漫画です。おそらく10分ほどで読み終えられる漫画なのですが、それだけの時間で、これだけ濃密な空間を提供できるメディアは、優れた漫画家によって描かれた漫画以外にはありえないでしょう。


 笑ってしまうのは、そんな漫画が1987年という、おそらくはバブルの最盛期に描かれたということです。きわめつきの「反時代的」漫画。

 今から、11年前。
 あの1960年代(吉永小百合橋幸夫の「いつでも夢を」エイジとでも呼びましょうか)に幼少期を過ごした、30歳前後の高野さんには、バブルの時代がそうとう気持ちの悪いものだったのではないでしょうか。

 そんな私の偏見ゆえでしょうか、バブル崩壊後に描かれたらしき作品からは「美しき町」ほどの感銘を受けませんでした。
 作者がそのことに意識的だったか否かはともかく、バブル期が生んだ「優れた成果」の一つではないかと、半分皮肉まじりで、私などは思ってしまいます。


 隣に住む若夫婦(旦那さんの方)のちょっとした意地悪で、夫婦は大量の「ガリ版刷り」を一晩でこなさなければならなくなります。
 「最後の一枚が刷りあがったのは明け方でした
 ノブオさんがしまってあったクラッカーを出してきました
 サナエさんは玄関へ牛乳をとりに行きました

 「インクの臭いがすごいね」
 「ええ」
  カチン

 キイイ・・・
 工場が見えました
 耳をすますとモーターの音が聞こえてきます
 さっきなにかのブザーも鳴りました

 たとえば三十年たったあとで

 今の、こうしたことを思い出したりするのかしら

 子供がいて、おとなになって、またふたりになって
 思い出したりするのかしら
 ノブオさんは、そんなふうなことを思っていました
 サナエさんも、そんなふうなことを思っていました

 この町で」


 三十年、たちました。

 ノブオさんとサナエさんは、どこか首都圏の郊外の建て売り住宅に移り住み、もうすぐ住宅ローンも終わるというところかもしれません。
 家庭にあっては、七ページの間に「インクの臭いがすごいね」「ええ」という会話しか交さなかった三十年前同様、互いに言葉少なかもしれません。

 三十年前のことを思い出したりしてるのか?

 その町で。


 『棒がいっぽん』 高野文子 (1957- )
 マガジンハウス 1995/07/20 ISBN4-8387-0613-8




 朝、某企業のイントラネット用ホームページ制作。
 当面の、もっとも確実な収入源になりそう。

 午後、嵯峨さん宅へ。
 嵯峨さんに進呈された、ユーミンの今年のコンサートパンフを見る。
 嵯峨さんのレコーディング風景の写真も3枚ほど。

 北一条西七丁目のHYPER DESIGN FACTORY「I&I」というところに、CDジャケットの版下出力について聞きに行く。
 A3版二枚、CYMK出力で計8枚で、約47,000円。安い印刷所を探せば、前回のジャケットよりも安くできるが、さて・・・。

 三和銀行で、お金をおろす。
 生活費、逼迫のため。

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