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19980714 関川夏央・谷口ジロー 『『坊ちゃん』の時代』

関川夏央・谷口ジロー 『『坊ちゃん』の時代』
  「ポルケ・ブック・レビュー http://www.booxbox.com/porque/」より

 7月9日、『『坊ちゃん』の時代』(関川夏央谷口ジロー 双葉社)を読みました。副題は「凜冽たり近代 なお生彩あり明治人」。

   * [坊ちゃんの時代―凛冽たり近代なお生彩あり明治人] 関川夏央・谷口ジロー

 帯には、手塚治虫文化賞受賞作! 我々が想像するより 明治ははるかに 多忙であった--- 漱石、鴎外、啄木、秋水。 時代を駆け抜けた 群像を鮮やかに 描いたシリーズ 全5巻完結。」
 その『『坊ちゃん』の時代』シリーズの第一部第一巻が『『坊ちゃん』の時代』。ふたたび帯、「見通せぬ未来を見ようと身もだえする漱石の苦悩。」


 日本人選手も初めて世界の市場に進出することになった(らしい)ワールドカップの最終試合を見ました。 前夜は前夜で選挙速報をぼんやり眺めて、やはりTVの前でした。時代がかったもの言いをする、日本の二十世紀最後の総理大臣になれたかもしれない男を、その職務から「解放」する選挙。

 『『坊ちゃん』の時代』は、今から九十三年前、前年から始まった日露戦争が終結した明治三十八年(1905)年から始まります。十一月、東京は本郷の千駄木。
 後、百年を待たずして、みずからの肖像が、日常の紙幣の上に印刷されることになったと知ったなら、おそらく驚天動地するであろう「明治の文豪」の、「『坊ちゃん』の時代」が、見事に描かれています。

 当時の首相は、桂太郎。龍太郎さんを遡ること、うん十代。
 『『坊ちゃん』の時代』では、明治の元勲山県有朋を「坊ちゃん」の赴任する中学校の校長に擬した、とあります。
 桂太郎はそれにへつらう、「野だいこ」のモデルであったとか。
 そんな政治家・文化人・芸術家はもちろん、安重根から東条英機まで、しかも1905年大晦日夏目漱石と新橋駅のコンコオスで三人を出会わせるという「くどさ」で、関川さんはこの物語の中に登場させます。

 われわれもまた、『『なにやらちゃん』の時代』を生きているのだなあ、と感じさせる一冊でした。
 何十年かあと、未来の関川夏央が、この時代を描くとき、だれを主人公にすえるのでしょうか。


 その関川さんの巻末文章「わたしたちはいかにして『坊ちゃんの時代』を制作することになったか」から引用します。
「わたしはつねづね『坊ちゃん』ほど哀しい小説はないと考えていた。この作品が映像化されるとき、なぜこっけい味を主調に演出されるのか理解に苦しんでいた。そしてそれらの作品はことごとくわたしの期待を裏切って娯楽とはいいがたかった。同時に、明治がおだやかで抒情的な時代であるという通俗的でとおりいっぺんな解釈にもうんざりしていた。
 明治は激動の時代であった。明治人は現代人よりもある意味では多忙であったはずだ。明治末期に日本では近代の感性が形成され、それはいくつかの激震を経ても現代人のなかに抜きがたく残っている。われわれの悩みの大半をすでに明治人は味わっている。つまりわれわれはほとんど(その本質的な部分では少しも)新しくない。それを知らないのはただ不勉強のゆえである、というのがわたしの考えであり、見通しであった。また、ナショナリズム、徳目、人品、「恥を知る」など、本来日本文化の核心をなしていたはずの言葉を惜しみ、それらがまだ機能していた時代を描き出したいという強い欲望にもかられた。
 そこでわたしは『坊ちゃん』を素材として選び、それがどのように発想され、構築され、制作されたかを虚構の土台として、国家と個人の目的が急速に乖離しはじめた明治末年を、そして悩みつつも毅然たる明治人を描こうと試みた。」


 『『坊ちゃん』の時代』 関川夏央・谷口ジロー 双葉社 1987/07/09 ISBN4-575-93059-8 本体価格:857円

 念のため。
 この本は「アクションコミックス」、漫画です。
 レベル高いです。


 

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