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19980917 司馬遼太郎 『草原の記』

司馬遼太郎 『草原の記』
 「ポルケ・ブック・レビュー http://www.booxbox.com/porque/」より

 8月29日、『草原の記』(司馬遼太郎 新潮文庫)を読みました。

   * [司馬遼太郎全集〈54〉草原の記・「明治」という国家]

 カバーの著者略歴は:
 「1923(大正12)年、大阪市生まれ。大阪外語学校蒙古語科卒。産経新聞文化部に勤めていた'60年、『梟の城』で直木賞を受賞。以後、歴史小説を一新する話題作を続々と発表。'66年に『竜馬がゆく』『国盗り物語』で菊池寛賞を受賞したのを始め、数々の賞を受賞。'93年には文化勲章を受賞。日本芸術院会員。『司馬遼太郎全集』(全50巻)がある。」
 平成七年発行の文庫本ですから、司馬さんの死には触れられていません。

 カバーには:
 「史上空前の大帝国をつくりだしたモンゴル人は、いまも高燥な大草原に変わらぬ営みを続けている。少年の日、蒙古への不思議な情熱にとらわれた著者が、遥かな星霜を経て出会った一人のモンゴル女性。激動の20世紀の火焔を浴び、ロシア・満州・中国と国籍を変えることを余儀なくされ、いま凛々しくモンゴルの草原に立つその女性をとおし、遊牧の民の歴史を語り尽くす感動の叙事詩。」


 大阪は吹田市の千里万博公園内にある国立民族学博物館:http://www.minpaku.ac.jp/ で、「特別展 草原の遊牧文明 大モンゴル展」が、開催されています(11月24日まで)。
 私は、今月5日と12日に、その会場に行きました。

 特に5日は、畏友等々力政彦:http://tarbagan.net/ さんが、博物館友の会講演会の講師を勤めるということで、ゲスト出演の嵯峨治彦:http://tarbagan.net/ さんとともに、スタッフとして裏口から入場するという得難い体験をしました。
 「トゥバ民族の民謡-喉歌(ホーメイ)をきく」と題されたその講演会(+演奏会)は大盛況で、定員110名のところ入場者数150名余りで立ち見が出、なおかつ電話での予約・問い合わせをお断わりしていたそうです。今までの友の会講演会の入場者数レコードだったとか。

 展覧会場で演奏をしているモンゴルの音楽家も何人か立ち見で見守る中、タルバガン:http://tarbagan.net/ (等々力政彦+嵯峨治彦)の演奏が流れてきたとき、なんだかジーンとしてしまいました。
 嵯峨さんの歌うモンゴルの自然賛歌「ボグド・ドゥンジン・ガラブ」と等々力さんの歌うトゥバ民謡「チラ・ホール」を同時演奏した曲だったのですが、改めて新しい音楽創造の場に立ち合えたこと、そしてその音楽が場所を得て、もっとも親身になって聞いてくれる人々の前で演奏されていることに感激したのです。

 講演会の所定の時間が終わっても、席を立つお客様はまれで、それから小一時間会場の皆さんに、等々力・嵯峨コンビは喉歌の実践レクチャーをしたのでした。


 特別展の会場には、モンゴル関連の日本語書籍類も展示されていました。
 そしてその中に『草原の記』(ハードカバー版)を見つけました。

 今、こうしてその本について書こう(あるいは引用しよう)としているのですが、これが難しい。
 ゆったりと、自然に流れていくような文章でありながら、緻密で、いいとこどりできない構成になっている。
 長大な作品ではまったくないのですが、作者の思い入れと文章の技術が最高潮に達して書かれた作品のようで、読書中も読書後も、その登場人物の一人一人が生きた人間として身近に感じられるというほとんど魔法のような本でした。


 少数民族の味方、自称「落ちこぼれ」の等々力政彦さんとおつきあいをするようになって、現代日本人にとって地図上の空白地域といってもいい、アジア中央部に、多くの民族とその移動・滅亡・衝突があったことを知った私ですが、それは極東アジアに住むわれわれにとっても、過去のものでも他人ごとでもないのだということを、司馬さんの本で確認しました。
 漢人・ロシア人・日本人・蒙古人が錯綜した時代、そして彼等の行動の陰で様々な被害を蒙った少数民族・・・。

 同じモンゴロイドの血を受け継ぐ民族が、かたや21世紀にも通用する「エコ」遊牧文明を発達させ、かたや21世紀を前に退潮を余儀なくなれつつある「エゴ」物質文明から離れられないでいるのは、なんとも不思議なものです。

 少数民族の視点から、また物を持たない遊牧文明の視点から、今この国のありかたを考えてみるべきなのかもしれません。

 といいつつ、夕食が深夜の時刻にずれこみ、夜毎「エゴ」ローソン食のお世話になっていた、大阪滞在中の田原でした。


 
『草原の記』 司馬遼太郎 新潮文庫 1995/10/01 ISBN4-10-115237-3

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