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19990212 小林よしのり 『新ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論』 / 現実的平和主義者って

小林よしのり 『新ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論』
 「ポルケ・ブック・レビュー http://www.booxbox.com/porque/」より

   *

 1998年11月3日、『新ゴーマニズム宣言SPECIAL 戦争論小林よしのり を読みました。

 1998年のベストセラー、話題の書の一つです。
 確かに、面白い。

帯には:
 表「戦争に行きますか? それとも日本人やめますか? 究極の選択を迫る、全く新しい日本人論。384ページ 狂気の描き下ろし最高傑作」
 裏「嗚呼、史上空前の問題作、ついに全貌を現す!戦後日本53年間の見えざる呪縛の鎖を断ち切る解放の書か?それとも戦争の悪夢を喚び起こす禁断の1冊か?戦争とは何か?国家とは何か?そして「個」とは?構想2年、製作1年、「ゴー宣」闘争最大にして最高傑作。最初で最後、384ページ描き下ろしでなければ表現できなかった超大作!今、日本が分かる!日本が変わる!」

近年見たうちでもっともひどい帯ですね。特に表側。小林さんがそんなこと描いているかあ?



 実は私、三か月の間、この本の書評を書くのをためらっておりました。
 「ほんまか?」といわれるかもしれませんが、私はこのブックレビューを「エンターテインメント」として書いております。「お笑い」や「息抜き」の対象として読者に楽しんでいただける場面でしか、私個人を登場させないようにしてきたつもりです。
 しかし、この小林さんの「論」に関する文章を書くにあたっては、私個人の「政治的信条」のようなものを提示しないわけにはいかない。
 そういう意味で画期的な本です。おそらく、何十万という読者が、自分の自分なりの先の大戦に対するスタンスを考えた(考え直した)。それは今ここにいる自分について考え(考え直す)ことでもあるはずです。
 「政治的信条」の違いゆえの批判が数多く発表させているようですが、小林さんのこの仕事に比較したなら、その影響力たるや微々たるものでしょう。小林さん(とその周辺)や、世の中全般に対して。それほどこの小林さんの一冊は、強力です。


 さて、私の「政治的信条」のようなものですが、小林さんとは相容れません。

 「PORQUE? Book Review」の目次ページの一番下に(つまりはこの一冊からこのレビューが始まった)紹介してある、猪木正道さんの『軍国日本の興亡 日清戦争から日中戦争へ』(中公新書1232)の「まえがき」文の一部を引用して、私の「政治的信条」のようなもの提示に変えたいと思います。
 ちなみに猪木さんは1914年生まれ、防衛大学校長も務められた学者さんであります。『軍国日本の興亡』は1995年に発行された本。「構想2年」で書かれたということはないでしょう。

 「国際社会の尊敬される構成員として認められるためには、軍国主義もその裏返しとしての空想的平和主義も、ともに有害無益である。軍事的価値、軍事力および軍人の不当な過大評価も、過小評価も避け、国際的常識にそって対応をすることが望ましい。
 軍事的価値と軍事力とを不当に過小評価する戦後日本の悪い傾向は、何よりもまず、自衛隊を無視したり、軽視したりする群集心理の形をとる。一九五〇年代のはじめ、私は北海道で、研究会のため集まった大学教授たちの一人が、訓練中の自衛隊員に向かって "税金泥棒" と叫んだのにびっくりした。自衛隊員はよくその種の侮辱に堪え、黙々と任務を遂行している。
 一九七〇年に私は防衛大学校長に就任し、自衛隊員の自信に深い敬意を感じた。しかし、過去の軍国主義に対する反感から、現在の自衛隊員をさげすむことは、長期間の間には自衛隊員の心の中にある種の毒薬を蓄積するのではなかろうか? さいわい、自衛隊員に対する国民の処遇は年とともに改善されており、最近日本社会党までが自衛隊の合憲性を認めはじめた。自衛隊員の心の中の毒薬が一挙に噴出するという危険は、一応去ったといえよう。
 いずれにしても軍事的価値を不当に過大評価する軍国主義に劣らず、軍事的価値を不当に過小評価する空想的平和主義も愚劣であり、かつ大きな危険を伴う。自衛隊の合憲性をはっきりと確立するとともに、自衛隊が国家の安全にとって不可欠の存在であることを国民の間に徹底することが必要である。
 軍事的価値が過大評価も、過小評価もされなくなるまで、いいかえれば、軍事的価値が妥当に適切に評価されるまで、日本は戦前・戦中の軍国主義を克服したとはいえない。
 軍国主義が愛国心を不当にゆがめ、中国人や韓国(朝鮮)人やアメリカ人の愛国心を否定して、日本人だけが愛国心を持っているかのごとく錯覚したことは、大きな禍根を残した。その反動として、戦後は日本人の愛国心そのものが軍国主義的なものと誤認され、愛国心が否定されてしまうという恐ろしい状況まで現出した。
 みずからの愛国心を否定する国民は、国際社会で尊敬されない。日本が国際社会の名誉ある構成員であるためには、軍国主義によってゆがめられ、汚辱された愛国心を軍国主義との癒着から救い出し、外国人の愛国心とも両立する本当の愛国心に純化しなければならない。この作業を完了するまでは、愛国心は軍国主義とのくされ縁から解放されないだろう。空想的平和主義についても、これを軍国主義の裏返しとして、完全に克服するのでなければ、日本人の愛国心は堂々たるものになれない。
 軍国主義と空想的平和主義とは、互いに相手の裏返しだというのが、本書の原点であり、結論でもある。 」

 これ以上当り前な意見もない、と私は思います。

 小林さんは「空想的平和主義」者ではありません。
 しかしながら、「空想的平和主義」者に対する記述、中国・韓国・米国・ヨーロッパに関する記述を見ていると、その感情のありようは、小林さん自身が本の中で揶揄する「空想的平和主義」者のヒステリックさに近いものを感じずにはいられません。
 小林さんのいう「純粋まっすぐ」君の資質は、小林さんの中にもっとも多いという印象です。
 それにしても、猪木さんのいう「軍国主義と空想的平和主義とは、互いに相手の裏返しだ」という言葉の重さを痛感します。



 人間は戦うことが好きという事実は、否定しようがありません。
 戦争が、政治的人間たちの腕の見せ所であり、広義のアートであることも、否定のしようがありません。
 国際的政治的平和活動が、平和を望む心からだけではなく、自国に災いが飛び火しないためや自国の利益を考えてのことであることも、否定しようがありません。
 どこか政治的に「キレ」ている人が、その「キレ」さ加減で、政治的権力を手中にいれるという現実も、否定のしようがありません。(地図を開いて、この文章の発信源「北海道江別市」と、テポドンの発射源、どちらが近いかを確認してみて下さい。江別市のほうが遠い方、たくさんおられるはずです)
 古い戦争の種であった、領土的野心・極端なイデオロギーを持った国家は消滅しつつありますが、その代わりに、新しい種、民族問題・経済格差の問題は大ききなるばかりであることも、否定のしようがありません。
 日本が平和ボケ気味であることもまた、否定のしようがありません(小林さんのおっしゃる通り)。

 現実的平和主義者になろうではありませんか。
 『戦争論』を読みましょう。
 その本に対して、ヒステリックではない論評を加えましょう。

 一国のなかに、様々な意見があり、それが自由に比較検討できるということも、大切な「軍備」ではないでしょうか?


こばやし・よしのり(こばやし・よしのり 1953- ) 幻冬舎---1998/07/10---ISBN4-87728-243-2
19960913 猪木正道 『軍国日本の興亡 日清戦争から日中戦争へ』:http://booxbox.cocolog-nifty.com/tahara/1996/09/19960913_88dd.html




 ポルケ同報、小林よしのり「新ゴーマニズム宣言 戦争論」。
 猪木正道「軍国日本の興亡 日清戦争から日中戦争へ」を紹介する形で。
 猪木さんの「軍国主義と空想的平和主義とは、互いに相手の裏返しだというのが、本書の原点であり、結論でもある。」という言葉の重さ。

 「茶の本」、CyberBookCenterへ郵送。

 江別市情報図書館大麻分館で「CDジャーナル」と「アウンサンスーチー演説集」を借りる。
 前者はBooxBoxレーベルCD営業のため。後者はビルマのお勉強。
 「アウンサンスーチー演説集」伊野憲治編訳、みすず書房1996/09/20、312.23/ア。

 守田青年がゲスト出演する、嵯峨治彦氏の「のどうたトライアングル」を聞きに、車で三角山放送局へ。
 放送終了後、守田氏嵯峨氏FOさんらと「Jack in the Box」で歓談。

 帰宅後、まぐまぐ  http://www.mag2.com/ で「PORQUE? Book Review」配信。
 とうに夜半を過ぎて。


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