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19990504 タハール・ベン・ジェルーン 『娘に語る人種差別』 / 妻、切れる

タハール・ベン・ジェルーン 『娘に語る人種差別』
 「ポルケ・ブック・レビュー http://www.booxbox.com/porque/」より

 1999年04月25日、『娘に語る人種差別』(Le racisme explique a ma fille suivi de "Paroles d'enfants")タハール・ベン・ジェルーン(Tahar Ben Jelloun 1944- )を読みました。

   * [娘に語る人種差別 新装版] タハール・ベン・ジェルーン 松葉祥一訳

 著者は、かつてフランスの植民地であったモロッコ出身で、現代のフランス語文学を代表する小説家・詩人・批評家(1987年に、北アフリカ出身の作家として初めて、ゴングール賞を受賞)。

 1997年3月のドブレ法案成立前後、著者はこの本を書こうと思い立ちます。
 ドブレ法案とは、外国人のフランス入国と滞在に関する法案で、「外国人を自宅に泊めた者は市役所に届けなければならないことなどを定めた移民締め出し法」。

 フランスでは、発売と同時にベストセラーになった本だそうです。
 民族対立などピンとこない面がある日本人ですが、来るべき移民大量流入時代に備えて(ホンマか?)、一読しておく価値があるかもしれません。



 訳者松葉祥一さんのあとがきを引用しますと、「人種差別に対する著者の主張は、はっきりしています。すなわち、人種差別は恐怖と無知と愚かさから起こる、そして人種差別の根本的な解決は子どもの教育しかないという主張です。」

 そんななまぬるい結論でいいのか!と言いたいところですが、例の「空爆」がなかなかうまく行かないのを見たりすると、おっしゃる通りという気もします。(念のため書いておきますが、私はNATO側よりユーゴ側の大統領さんに非があると考えます)

 確かに、何十年か前強制連行されたきた人々の子孫だと「知った」上で、電車通学中の朝鮮・韓国国籍女子生徒のチョゴリに切りつける「豪の者」はそうそういないに違いありません。
 「知らなかった」なら、「知らせられなかった」世の中の責任も多少あるかも、ですが。



 昨年のワールドカップサッカーは、開催国フランスの優勝で幕を閉じました。

 中心選手のジダンをはじめとして、あのチームは見事な混成チームでした。フランス系フランス人とアフリカ系フランス人、白い人、黒い人、中間の人、素晴しいチームワーク。あのブラジルに大差をつけて勝ってしまった!

 移民に対する過酷な法律(今思えば「ドブレ法案」だったのでしょう)を制定した人達も、その快挙には手放しで喜んだという、報道を当時見た記憶があります。

 先日のワールドユースでの日本チームの活躍を見てもわかるように、結局動物種としてのヒトには身体能力的にそれほどの差はありません。ここに来て、サッカー文化の有り様を日本も学びつつあるという印象。

 社会的・文化的差異が、優等/劣等人種幻想を生むわけで、その差異を優劣の物差しではかるのではなく、多様性の豊かさという視点で把握できるようになれば、世の中、本当に変わるのでしょう。

 やっぱり「教育」なんですか。



 さて、最近の読書はどこかしら「差別」をテーマにしたものばかり。

 司馬遼太郎『故郷忘じがたく候』、大田昌秀・池澤夏樹『沖縄からはじまる』、この『娘に語る人種差別』、次回紹介する村上春樹『約束された場所で』(元オウム信者へのインタビュー集です)

 われわれがポアしてやることで、あいつらはやっと良い後生があたえられるんだ、だからポアしちゃえ、というのは、もっともひどい差別です。極悪。

 がしかし、『約束された場所で』を読む限りでは、元信者にせよ、自分が精神的に次元の高い場所にいた(勘違いなんだけどさ)ことを否定する人間は皆無。その結果、はっきり言って、たいへん後味の悪い本に「約束された場所で」はなっています。

 風土に見合った、高温多湿の「差別」を生む土壌がこの国には存在するようで、息苦しさを覚えます。

 そして、おそらく、その息苦しさを一時的に解消するには、誰かを差別するのが一番なのでしょう。しかし、それをしてしまうと、娘が「〇〇人は××」と言い切るような人間に育っていくのも目に見えているようで。
 ということで、私は、私自身のためにも、小日本人のためにも、その息苦しさとともに生活することを選択したいです。



 日本版『娘に語る人種差別』には、ちょっとしたカタルシスが用意されています。
 原書にはない、著者とフランスの子供たちの対話集です。

 そこから導き出される結論は、一つ。

 生まれついての人種差別主義者はいない。

 そのことに望みをかけるしかない。
 やっぱり教育なんでしょう。



 例によって引用を。
「--じゃあ、何の教育も受けない動物の方が、人間より優れているわ!
 動物には、言うならばあらかじめ決まった感情はない。逆に、人間には偏見よ呼ばれるものがある。人間は知り合う前に他人を判断するんだ。どんな人でどんな価値をもっているか、前もってわかると思っている。よくまちがえるんだけどね。恐怖心はそこから生まれるんだ。そして、人間は時々この恐怖心と闘うために戦争をすることになる。パパが恐がると言うとき、がたがた震えることだと思ってはいけないよ。逆に恐怖心のせいで攻撃的になるんだ。脅かされていると感じて、攻撃する。人種差別主義者は攻撃的なんだ。

 --じゃあ、戦争が起こるのは人種差別主義者のせいなの?

 いくつかの戦争は、そうだ。根本には、他人の財産を奪おうとする意志がある。人種差別や宗教が、人々に憎しみを抱かせるために、知り合ってさえいないのに互いに嫌悪させるために使われるんだ。外国人への恐怖、私の家や仕事や妻を盗るんじゃないかという恐怖心がある。無知がこの恐怖を大きくする。私はこの外国人が誰か知らないし、彼の方も私が誰か知らないというわけだ。例えば、隣の家の人たちをごらん。彼らは、クスクスを食べに来るよう招待するまで、ながいあいだ私たちを警戒していた。あのとき彼らは、私たちが彼らと同じように生活していることがわかったんだ。私たちが別の国、モロッコ出身であるために、彼らの目にはずっと危険だと映ってきた。招待することで、彼らの警戒心を解くことができたんだね。話し合って、少し知り合った。いっしょに笑った。このことが意味するのは、それ以前は階段で出会ってもせいぜい「こんにちは」と言い合うぐらいだったのが、気がねしなくなったということだ。

 --だったら、人種差別と闘うために、招待し合わなくちゃ!

  いい考えだね。知り合うこと、話し合うこと、いっしょに笑うことを学ぶことだ。でも楽しみだけでなく、苦しみも共有すようとすること、私たちが多くの場合同じ関心、同じ問題をもっているということを示すこと、それによって人種差別を弱めることができるんだ。旅行も、他の人々を知るいい手段になりうる。すでにモンテーニュ(一五三三-一五九二)は、同じ国の人々に、旅行をしていろいろ違う点を見てくるように勧めている。彼にとって、旅行は、「私たちの脳みそを、他の脳みそでこすって、磨きをかける」ためのいちばんの手段だった。自分をよく知るためには、他人を知ることだ。」
(25-28p)

 「--どうしたら、国が人種差別的になるの?

 国全体じゃなく政府が、自国に属していない土地に行って住み着き、それを力で維持しようと勝手に決めるんだけど、それはこの土地の住民を軽視しているからだし、彼らの文化には何の価値もないと考えて、彼らに文明と呼ばれるものをもたらすべきだと考えるからだ。一般的に言って、その国は少し開発される。何本かの道路、何軒かの病院と学校が建設される。利益のためだけに来たのではないことを示すためのこともあるが、つねにそれを利用してもって儲けるためだ。実は、入植者は、その国の資源を搾取さるために役立つものを開発しているんだ。これこそが植民地主義だ。たいていの場合それは、新しい富を横取りし、権力を増大するためなんだけれど、それを口に出すことはけっしてない。それは侵略、盗み、暴力であり、人々に重大な結果をもたらす可能性がある。」
(86-87p)


 そういえば、北海道と沖縄って、「内地の人」に「開発」が必要って考えられてるんだよね。
 って、北海道の人もそれに甘えて、こんなになっちゃったんだけど。

 北海道・沖縄。今必要なのは、「独立するぞ!」ぐらいの気概かも。



タハール・ベン・ジェルーン(Tahar Ben Jelloun 1944- ) 松葉祥一訳 青土社1998/12/15---ISBN4-7917-5682-7




 午後、PICO STOREストアルール作成。
 夕刻、PORQUE? Book Review 『娘に語る人種差別』。

 九時から NHKスペシャル「人体 遺伝子」
 今日のテーマは「日本人のルーツ」を探る。
 アイヌ民族 の楽器 トンコリ の演奏家 OKI(加納沖) さんを全面フィーチャーしての番組だった。
 ミトコンドリアDNA の配列を研究した結果、日本人特有のDNA保持者は全人口の4%ほど。あとは中国系・韓国系・アイヌ系・琉球系の人々のDNAに近い人が大半。
 生物学的に見た場合、優等民族劣等民族などないことは明か。

 夜、妻、切れる。
 こちらの悪い面も多々ある。
 しかし、自分が何をしたいかなんて、人には教えてもらえないだろう。
 育児・家事のたいへんさはわかるが、そんな「雑事」に振り回されない気概をもたなきゃしょうがないだろう、とも思う。
 それとも、やはり、問題は私の偏狭さにあるのだろうか?
 反省する。

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