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19990620 池澤夏樹 『むくどり通信』 / 娘一歳、ダーチャにて

池澤夏樹 『むくどり通信』
   「ポルケ・ブック・レビュー http://www.booxbox.com/porque/」 より

 1999年05月17日、『むくどり通信』 池澤夏樹(1945- )を読みました。

   * [むくどり通信 雌伏篇] 池澤夏樹

 カバーには:「むくどりは何でも珍しがる。周囲をきょろきょろ見てまわり、あきれたり感動したり失敗したり・・・。「発電所の作りかた」「はじっこ踏破記録」「スクランブル突破作戦」「マクドナルドの救い」「ナイルの水の効果」など、旅と自然を愛する著者がむくどり的好奇心で綴った週刊朝日連載中のエッセイ」



 池澤夏樹さんは現在読売新聞朝刊に『すばらしい新世界』という小説を連載中。
 その池澤さんが1993年から1998年まで週刊朝日で連載していたのが『むくどり通信』。
 思想・信条の変化があったわけではなく、より広い読者層を求めての「変転」のようであります。

 昔書評本『読書癖』を2冊ほど読んだぐらいで、池澤本から距離を置いていた私を、その世界にぐいと近づけたのがG-Whoさんとの出会いでした。
 私の3倍くらいの読書量のG-Whoさんは、某TV局にお勤め。池澤本の正しい読者であり、夏樹さんの娘さんの声優春菜さんのファンでもあるという人。



 「池澤御嶽」には、『むくどり通信』を紹介する「むくどりクロニクル」というページがあります。
 私がごちゃごちゃ書くより、そのページから、G-Whoさんの『むくどり通信』紹介文を引用したほうがはやいでしょう。

「むくどり通信」は93年から98年まで「週刊朝日」誌上で連載されたエッセイです。年に一冊「むくどり通信」「むくどりは飛んでゆく」「むくどりの巣ごもり」「むくどりは千羽に一羽」「むくどりとしゃっきん鳥」として単行本としても刊行されています。
 池澤夏樹さんには「南鳥島特別航路」や「インパラは転ばない」「明るい旅情」など紀行エッセイ、「母なる自然のおっぱい」や「楽しい終末」などの思索エッセイ、両者を併せた「未来圏からの風」や、科学を材料にした「エデンを遠く離れて」、映画を論じた「シネシティー鳥瞰図」などさまざまなエッセイがあります。
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 その中で「むくどり通信」シリーズは、週刊というリズムの中ですべての要素を含みながら、さらにオキナワの基地問題などのジャーナルな同時代性をも併せもつイケザワ・ワールドの集大成ともいえるものです。一回一回は肩の凝らない読み物になっていますが、6年間に渡るすべてのタイトルを並べてみたら、そこには深く静かによく知りよく考えよく味わう「むくどり」精神の闘いの軌跡が読みとれます。」


 「すばらしい新世界」の主人公技術者の林太郎さんは、ネパールに風力発電用の風車を建てるため、現在出張中。

 先週、利尻島への里帰りの行き帰りで、北海道日本海側苫前町・羽幌町の風車を見ながら考えました。
 私の娘たち(それぞれ四歳・一歳になりたて)が大人になるころには、この巨大風車林立の風景が当り前のものになるのだろうか? この風を集めるだけの発電様式で、すべての電力がまかなえるなんてことはありえないのだろうが、それが実現したならどんな風になるのだろう?

 利尻島も含めた、環日本海地帯=北前船ルート=昆布ロード(北海道から沖縄まで!)が、エコエネルギーの先端地域になる可能性も十分あるのではないでしょうか。



 例によって引用を。

 妻子持ち「日記癖」の私にも「確かに」と思わせる一文。

「ひとりものは我慢づよい、と『歩くひとりもの』にある。身体の具合が悪くても、どれぐらい悪いかわからない。津野さんは痛風を捻挫と思い込み、すごく痛いのに待てば治ると思って、無駄な我慢をしたという。まったく同じ状況でぼくは伯母を亡くしている。この人も生涯独身で、痛みに強く、ひどい腰痛に平然としていたが、それは実はガンだった。家族の判断が正しいとはかぎらないが、家族が大袈裟に騒げば病院には行くだろう。
 同居人は鏡である(津野さんは反射板と表現する)。それぞれの一日を夜になった話す相手。相手の意見が大事なのでなく、話すことで事態を整理する。車を運転する時ならばもっと直接に役に立つ。強引な割り込みなどに対して、誰か脇に乗っていれば「バカヤロ、死んじまえ」とこっちが言い、「そうだ、死んじまえ」と同乗者が言ってくれて、それで憤懣は解消する。一人だと運転そのものが乱暴になる。
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 ここまで考えたところで、ぼくは日本文学史の重大な謎を解明する鍵を手に入れた。すなわち、日記文学と独身者の関係。近代で最も有名な日記はもちろん永井荷風の『断腸亭日乗』である。なぜ彼はあんなに克明に日々の記録をつけたのか。あれは家族というものがあれば話して忘れてしまうはずの内容ではなかったか。一人だからこそ、彼はそれを話す代わりに書いた。樋口一葉も立派な日記を残しているが、彼女も独身だった。平安朝の女房文学としての日記は、通い婚という、ほとんど独身に近い寂しい結婚生活が生んだものだ。海外でも、長大な日記で有名なアナイス・ニンに夫がいたとは聞いていない。
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 実際の話、妻帯者に日記はむずかしいかもしれない。書いているところを肩ごしにのぞかれたり、こっそり書けば「何かわたしにいえないことがあるわけね」とかんぐられたり。妻たちが日記を敵視する理由は明らか。幸福な妻帯者ならば日記を書く必要などないはずなのだ。」
 (「日記文学の宿敵」96-97P) 

池澤夏樹(いけざわ・なつき1945- ) 『むくどり通信』 朝日文芸文庫1997/03/01---ISBN4-02-264141-X






 朝、義母を交えた家族で、「ふれあい農園」。
 大根とほうれん草を間引いて葉を収穫。じゃがいもの茎に土を盛る。

 北海道からちょいと海を渡ったロシアでは、北海道以上の経済不振で、自給自足・物々交換が当り前のことになっているらしい。
 自家農場のことを「ダーチャ」と呼ぶことは、1993年夏、極東ロシアにホームステイして知った。車で「ダーチャ」まで連れていかれ、なんとかベリーを収穫したのだった。
 そういえば、自分が生活していたころの利尻島も、「ダーチャ」イコール「はたけ」は大切なものだったなと思い当たる。海からの生産物と、山からの生産物。あとは米だけ。
 この北海道という島が、独自の自然風土と十分な広さの土地(たとえばオーストリアの面積は北海道の約1.1倍である)を持っていることも考える。
 この間見た、苫前町の風力発電用の風車も思い出す。毎年の降雪量が変わらなければ、水資源にもことかかない。
 食糧・エネルギーを自給自足し、足りないものを「海外」との物々交換で補う。そんな自治北海道の社会ができないものだろうか?

 日本は平和だ。
 もし私が、NATO軍が武力介入する前のコソボでこれを書いていたり、今現在チベットでこれを書いていたりしたら、どんなひどい目にあってもおかしくない。
 日本においては、「そんなことしたら、ますます不景気になるだろう」という軽い反感を買う程度じゃないかな。

 閑話休題。
 大根の葉っぱがうまい。
 もぐもぐいわせながら、「風力発電・太陽光発電の効率もよくなって、資材も安くなるだろうし、雪の貯蓄を夏有効利用する方法も開発されるだろうし、その頃は衛星使ってインターネットするようになっているだろうし、あとは自分の体が元気で、いまより創造的な仕事ができているかどうかだな」と、20年後、60歳になった自分の北海道での生活を想像する田原であった。

 そして下の娘はそのころ、二十一歳になっているのか。

 私が管理・運営する「注文の多い掲示板」に書き込み。

[BOOXBOX]一歳・名波・天てれ 投稿者:BooxBox 田原ひろあき  投稿日:06月21日(月)09時58分30秒
  20日、下の娘が一歳に。
 一年間といえば、ワールドカップで、日本代表がクロアチア代表と戦ったのが、その日。
 結局「ひかり」と名付けたのですが、実はWカップ出場を記念して「ななみ」という名前にしようとチラと考えました。塩野七生さんというグレートな女性もおられることだし。

 まずは一年、息災で何よりじゃ。

 で当の名波選手ですが、19日、ジュビロ磐田の一選手としての最後の試合を1対0の勝利で飾りました。去年までドゥンガのいたポジションに入って、ドゥンガがいたときと同じチーム成績挙げてしまったわけで、「ななみ」グレートふたたび。

 父は、上の娘に買ったはずの指ピアノを私物化していることに負い目を感じてか、下の娘のプレゼントに上の娘がおそらく「集中」してきくであろう「天才てれびくん」(NHK ETV PM6:00)のCDを買ってきました。19日発売ほやほや。CD屋さんで「おかあさんといっしょ」「ポンキッキーズ」等の棚の前にたたずみ、必死でCDを探す40男。そんなものになろうとは・・・・・・

 なにはともあれ、うちの「ななみくずれ」にも本物の名波選手にもまたよい一年をすごし、2000年の6月20日を迎えてほしいと願ってやまないのであります。

 PORQUE? Book Review、池澤夏樹「むくどり通信」。

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受信: 2007.05.20 18:50

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