20050821 ゴーマニズム宣言1・平成のよしりん・よしりんの平成
* [ゴーマニズム宣言SPECIALパール真論] 小林よしのり
昭和の世に『東大一直線』『おぼっちゃまくん
』という、子供向けギャグマンガのヒット作を連発した小林よしのり
さん。『ゴーマニズム宣言
』が雑誌「週刊SPA」に連載開始されたのが、1992(平成四)年1月。単行本第一巻『ゴーマニズム宣言 1
』の発刊が1993(平成五)年7月で、それ以降2005(平成十七)年8月の現在まで、あまたの「ゴーマニズム」本が出版され読者を獲得し続けている。そしてこれからも間違いなく売れ続ける。
後世、平成の世を振り返ってみるとき、この『ゴーマニズム宣言』(とその作者とその影響・波紋)を抜きにして、その時代を語ることはできないだろう。その人間性・作品への好き嫌いはともかく、今、小林よしのりさんがもっとも大きく強い影響力を持った書き(描き?)手の一人であることは、間違いのないところ(小林憎しで、そのことさえ認められない人がいることも予想できるが・・・)。
というわけで、万博世代の人間にとっては「もう十七年かよ!」の平成の世を、『ゴーマニズム宣言』を通読することで、振り返り、前に進んで行きたいと思った次第。
なぜ、小林作品がこれほど支持されるのか?
自分が考えるその理由は、「優れたギャグマンガのセンスを持った人間が、もろもろのタブーとされたテーマを、ギャグマンガベースのエンターテインメントとして、真摯になおかつ継続的に、読み解き編み直して展開していき、作者自身の成長(という言葉遣いには賛否あろうが)・変化の過程も克明に表現されていくのだから、それは面白く、刺激的で、読む者がそのテーマについて考えずにはいられない、感情を移入せずにはいられない作品になるに決まっている」、というもの。
そんな訳で、小林さんの一人勝ちは続くだろう。作品の特質・作者の資質から見れば、それは当然の結果。半端な力量の批判者は、まずその批判自体が小林作品以上に優れたものを提出しない限り、小林作品の中で見事に虚仮にされ続けるだけなのだから。
ただ、小林さんは、無敵ではあるが、独裁者ではない。権威主義者からこれくらいほど遠い人もいない。そのくらいのことは、落ち着いて見れば(大人なら)、わかりそうなものだが、たいへいの批判は、その無敵さにひがんで独裁者呼ばわりすることで気を晴らしているようにしか見えない。
『ゴーマニズム宣言 1』(1993年発刊の扶桑社版を読んだ)では、小林さん自身まだ何を始めてしまったか、無自覚である(そんなもの「神のみぞ知る」だし、知っていたら書かなかったのでは、とも思う)。今となれば、逆に、それが新鮮で面白い。
差別問題、薬害エイズ、オーム真理教とその後展開されるテーマが、まるで序章を読ませるかのように提示されていく。
さて。
巻中で『おこっちゃまくん』に投書してきた子供たちもいまや二十代後半になっているはず。今度の9月11日の選挙、当然投票に行くことができる(その気があれば)。
今うちの子供たちが、当時の『おこっちゃまくん』投書の子供たちとほぼ同年。今彼らにわかる言葉で、世の中や政治について語れる人間がいるだろうか?
そう問いかけてみれば、小林さんのしたこと・できたことの凄さがわかるはず。
今存亡の危機にあるような政党は、ずーっと、内輪で・内輪に通ずる言葉だけ使って・内輪話してきただけなのではないの? その内輪の結束のための仮想敵として、小林さんがいてくれて良かった、という側面もあるんではないの? 十数年後、うちの子供らに一票入れてもらえるような活動してるのかい? まあ、十年後のことなんてとても考えてられないか? もしそうなら、そんな政治家、政治家でいる必要も意味もないと思わないかい?
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コメント
話は全然違うけどさ、オレ西部邁氏の大ファンなんですよ。かなり昔の話になるけど、講演会へいった時、次女がよちよち歩きで、西部氏に頭を撫でて頂き自慢してたんだけど、羨ましがったのは私の弟1人だけです。北海道が生んだ偉大な思想家だとオレは思っているんですけどね。
投稿: 南出 | 2005.08.22 16:40
> 南出さん
実は、西部さんのことはほとんどよく知らないんです。いっとき、中沢新一さんを応援したことぐらいしか。著書は読んでません。
札幌・厚別のご出身らしいですね。高校時代の同級生が、厚別でいっしょにお酒を飲んだことがあるそうで、「(人柄の)いいおじさんだった」と言ってました。
「ゴーマニズム」初期は、小林さんにおちょくられてるようですけど、その後ある程度仲良くなるんじゃなかったかな。「ゴー宣」、「新」になってからの5・6巻までは読んでますが、「旧(?)」シリーズは、今回初めて読んでます。
西部本、何か、おすすめの一冊があれば教えてくださいまし。
投稿: 田原@BB | 2005.08.24 08:24
いまや師弟関係みたいになっている2人ですが、昔、サブカル論か漫画論か何かで、「電車の中で漫画読むようなやつは家系の恥だ」みたいな発言を西部さんがしたため、当初は強い反感をもったようです。>小林さん。かなりメチャクチャに漫画の中で描いていましたね。
西部さんは、小学生の時に帯広に住んでいたこともあったとのことで、私にとっては余計に親近感があります。著書のオススメはエッセイで『寓喩としての人生』(徳間書店)、評論集で『ニヒリズムを超えて』(ハルキ文庫)『死生論』(ハルキ文庫)あたりが入手しやすく、かつ読みやすいと思います。
『寓喩としての人生』は妻もオススメ!
投稿: 南出 | 2005.08.25 20:16
『友情』先に読んでみました。面白かったです。20050909分。
『寓喩としての人生』も探してみます。
今朝(11日)のTV、竹村健一さんのやつ、に西部さん出てました。尊厳死に関する対論。
投稿: 田原@BB | 2005.09.11 17:59