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20050822 柳宗悦・無印良品・ジンギスカン「だるま」

   * [芸術新潮 2005年 07月号]

 『芸術新潮』2005年7月号の「特集 生活デザインの素 日本民藝館へいこう」が面白かった。
柳宗悦という巨人の仕事をそのまま紹介せず、日本民藝館の収蔵品を、坂田和実さんという目利きさん(カリスマ古道具屋さんらしい)のセレクションで再構築・再確認する、というのが企画の一つ。
ついで、その坂田さん、民藝館学芸員の尾久彰三さん、グラフィック・デザイナーの山口信博さんの鼎談。柳宗悦の誕生(1889年)から3代目館長の柳宗理(1915- )さんの時代まで民藝館の歴史を紹介するページ。そして、民藝館に縁のある人・よく知る人・初めて訪問する人、人それぞれのエッセイ(三宅一生さん、千宗屋さん、等8名)。

鼎談で特に印象に残った部分。民藝館所蔵の李朝の三段重ねにそっくりだという、無印良品の「ランチボックス・スリム・3段」を眺めながら、「無心の美」をめぐって。

「尾久 それこそ柳さんがいちばん望んでいたことですよ。自分はさまざまな民藝品を集めてここに展示しているけれど、それは新作工芸の手本にするためだ、とはっきりいってますから。
坂田 ただ疑問に思うのは、柳が評価した民藝の「無心の美」を、そのまま写そうとする現代の工芸作家は、もう無心ではないわけでしょう? どうしてもそこに矛盾がある気がするんです。だったらむしろ手仕事に拘らず、この無印の弁当箱のように、工業製品でありつつ民藝のかたちを生かした道具を使ってみたいと思う。機械の「無心の美」にも眼をむけたい。
山口 無印良品の雑貨類は、工業製品としては最良のものだと思います。けれどもそれだけで生活できるかというと、たぶん満足できない。やはり手仕事で作られた器も使いたくなるんです。
 私は何か霊性のようなものは、身体をとおして顕現すると考えていて、宗教学者でもあった柳が手仕事に拘ったのも、そのへんに理由があるのだろうと思っています。霊性という言葉がわかりにくければ、ぬくもりでも味でも何でもいいのですが。工業製品にはそれは宿らない。しかし人はそれを求めます。モダンデザインのある種の奇矯さ、過剰さは、工業化社会で失われた霊性の、その喪失感の穴埋めのようなものではないでしょうか。
尾久 さきほどの坂田さんの「無心」の話ですが、柳さんの説いた無心は、何も知性の否定ではないのです。たとえば江戸時代の陶工にしても、問屋や親方からあれこれ指図されながら世間の流行にあわせた器を作っていたわけで、それはもう、売らんかな主義、邪心の塊だったでしょう。でもね、納期にむけて急いで量産しているときは、どんな職人だって脇目もふらず、ということになる。そんなときの、空っぽの心理状態が、柳さんのいう無心なんです。だから現代の作家にもそれは可能でしょう。」

LOVE ARCHITECTURE』(KIKI TOTO出版 20041010)という本にその日本民藝館が登場していた。
KIKIさん(ちゃん?)は、武蔵美の建築科卒のモデルさんで、多彩。この本も「ALL Text,Photographs & Drawing by KIKI」だそうだ。そしてそのどれもが、「タレントさんの余技」の域を完全に越えている。天は何物も与えてしまったらしい(本人がちゃんとゲットしたってことなんだけどさ)。

   * [LOVE ARCHITECTURE] KIKI

KIKIさんの訪問先でこちらにも馴染みのある場所を、登場順に挙げていくと。
建築コーナーでは、
モエレ沼公園:当然、イサム・ノグチさんへの言及あり。
トラベルコーナーでは、
京都:桂離宮にも行ったんだ・・・。田原は、桂に住んでいて(ワンルームマンションの窓から、桂離宮の森とその背後遠景に比叡山山頂が見えた)、その周辺は散歩&バイク&ジョグ・コースでよく通ったけど、中は見れず仕舞い。
北海道:札幌では、なんとジンギスカンの「だるま」と「soso cafe」を訪問。組み合わせが渋すぎる。
ミュージアムコーナーでは、
原美術館:関東圏在住時代は、デートコースの一環としてよく利用させていただきました。カフェができて間もなく、近所にあのでかい高いビルもできてしまって、庭での歩きが落ち着きのないものになってしまった記憶が。
そして、日本民藝館。

「それからしばらくして、母と京都へ旅行した時に、なんの予備知識もなく、ふらりと訪れた場所があって。その時から、京都でお気に入りの場所は? と聞かれると、真っ先に挙げる場所になる河井寛次郎記念館である。陶芸家・河井寛次郎のアトリエ兼自宅を記念館にしたもので、京町屋という印象こそないが狭い間口に土間と玄関。抜けると中庭があって、さらにその奥に、京のど真ん中、それも住宅地だというのに立派な登り窯がある。建物も庭も、そこに置かれた石や彫刻、家具や調度品、作家自身の作品も多数ある。夏の夕方、蚊取り線香のほのかな香りの中、彼が彫った腰掛に座っていると、あまりの心地の良さに時が経つのを忘れてしまう。それで、母と私が思ったのは、なんだかあそこの駒場の建物に感じが似ているわねえ・・・・・・。
 それもそのはず。あの美術館は、用の美を世間に知らしめ広げようと「民藝」という言葉をつくり、民藝運動を始めた柳宗悦や河井寛次郎らが造った日本民藝館だったのだ。そこからいろいろな知識が得られると、あの頃お家で使いたいと話していた器はバーナード・リーチという人の作品だ、とか、渋谷の東急文化村で展覧会が開かれていた棟方志功も民藝運動に参加していた、なんてことを知ったり。どうも民藝運動に関わりがある辺りは、私の好みに合うらしい。時間はかかったけれど、好きなものてそうそう変わらないもので、ちょっとずつ知識が増えると、一層面白くなる。」

巻末を飾るのは、「東京タワーの見える風景 Love Tokyo Tower」。
KIKIさんは、港区の生まれ育ちで、「25年以上ずっと東京タワーを眺めて育ってきた」らしい。
「ここ近年、高層ビルが次々と建っている。それによってタワーはビルの陰に隠れ、あるところでは思い掛けずビルの合間から顔を出す。景観が損なわれたと言う人もいるかもしれないが、そうは思わない。周りにできた建物も含めてひとつの風景だと私は捉えている。」
 これは景観を見るにあたっての「無心の美」? 東京タワーの「用の美」?

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