20070225 賢者の言葉・中村庸夫・なぜ船は彼女と呼ばれるのか
中村庸夫 (なかむら・つねお、 1949年- ) 海洋写真家 wiki
「なぜ船は彼女と呼ばれるのか
英語のシップが船を表す総称として使われるようになったのはいつごろからなのだろうか。昔はそれぞれの国や地方で船の型や用途に応じて呼び名は違っていた。ペルシャ湾やインド洋、紅海で用いられている帆船はダウ、ハンザ同盟の頃の貨物帆船はコグ、二本マストのオランダ船はドッガー、初期の航洋帆船はキャラベルなどそれぞれの国や地方の呼び方があり、これら全体を総称する世界的に共通する言葉というのはなかったはずである。
帆船が全盛時代に入った一八世紀の末から一九世紀にかけて、大型帆船の艤装型(甲板上の帆を張る装備)には、バーク型、バーケンチン型、フルリグド・シップ型などが現れた。フルリグド・シップ型は、三~四本マストをもつ帆船で、すべてのマストに横帆をもち、最後部の最下部後方にだけ縦帆であるスパンカーを備えていた。当時の帆船の中では、このフルリグド・シップ型が一番多かったことから、その名前を略したシップが船の総称になったのである。
ところで、船は「彼女」という代名詞が使われるがそれはなぜか。「男が乗っかって操るから船は女に決まってらあ」という船乗りもいるが、アメリカ海軍の元帥チェスター・ニミッツによると「紅や白粉にたくさん金をかけているも飾りたてておかなければならない点で、船と婦人は共通しているからだ」ということになる。さらに二ミッツは細かい理屈を並べたてた。私も同感するところが多いのでぜひ紹介したい。
① いつもその周囲にはてんやわんやの大騒ぎが演じられる。
② その周囲には一団の男衆がつきまとっているのが常である。
③ ウエスト(中部甲板=腰)とステイ(支柱索=頼りにする男)とをもっている。
④ 見栄えをよくするために多量のペイント(紅、白粉)の投入が必要である。
⑤ 諸君を破局へ導くのは、それの入手費ではなく維持費である。
⑥ 満身飾り立てられる。
⑦ 正しく扱うには当を得た男子が必要である。
⑧ 上半身はあらわに出し、下半身は隠している。そして入港(帰宅)すると、いつもブイ(浮標=寝床/boys とのしゃれもある)に突進する。」
中村庸夫 * 『世界の帆船物語 華麗なる海の女王たち』 * (新潮文庫)より。
「新日曜美術館」は、特集「虹色のいのちをつなぐ 染織家・志村ふくみの仕事」。
「人間国宝・染織家の志村ふくみ * さんは82歳になった今もなお、新たな創作に取り組み続けている。これまで自分で糸を染め、織ってきた布のはぎれをパッチワークのように縫い合わせ、軽やかで自由な世界を生み出しているのだ。半世紀もの間、植物染料と平織りにこだわり、貫き通してきた志村さんの手は止まることをしらない。
桜の淡い色合いは、今まさに咲き誇らんとしている桜の枝を刈り取り、繰り返し煮ることで初めて現れ出る。志村さんの創作の根底にあるのは、自ら手を下した植物への弔いだ。だからこそ、植物の命をなんとしてでも糸と織りに、そしてそれを身につける人にまでつなげていくのだという強い想いで作品に取り組んできた。糸を藍に染めるとき、一瞬だけ現れる緑色が伝える生と死のメッセージ。そして織りすすむにつれ聞こえてくるメロディーとリズムの不思議。そのときどきに、志村さんをより深いいのちの世界へと誘ってきた色がある。「植物から色をいただいている」という志村さんが今、自然と響きあう生き方とはどういうことなのか、その豊穣な言葉で私たちに語りかける。それは自然とのつながりを失って、自分の命の実感さえ薄れてしまっている私たちに、大切な響きを届けてくれるに違いない。司会の2人が志村さんの工房を訪ね、珠玉の言葉を聞く。」NHKオンライン ホームページ http://www.nhk.or.jp/ より
志村ふくみ (しむら・ふくみ 1924年(大正13年) - ) 染織家 wiki
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