20070926 上方と下つ方(かみがたとしもつかた)・「旅の時間」の時間・001
WRさん、こんにちは。
いつもメールをありがとう。
そしていつもながら遅レス御免。
手術決断と手術日日程決定、了解です。
手術がうまくいくこと、術後快方へ向かうこと、心から祈っています。
さて。ではさっそくこないだの話の続きを、と行きたいところだけど、その前に一つ。 さらなる材料があって。突然なんの話だ、って感じかとは思いますが、まあお付き合いのほど。
桂歌丸さんの札幌での落語独演会に出掛けるという女性に、その公演当日、札幌で会ったんだよね。 北海道内陸部の小都市から、直線にして日光から東京都区部ぐらいの距離を、車で出て来たという。
こちらは常々、北海道で見る「日本の伝統芸能」って、どうよ?と思ってて、北海道でのその手の催し事への参加を極力避けてる。で、実際のところどういうものなのか聞いてみたんだよね、素直に楽しめるのかどうか。 でも考えてみればバカな質問で、道産子のその人にとっては一度行ってみて楽しかったからこそ今回もあるんだろうし、「面白いよう!」としか返ってこないに決まっている。
その後、何かの拍子に「人形浄瑠璃」の話になって、彼女はそれも札幌で(ホール文楽?)観てるらしいんだけど、こちらは大阪でしか観たことない…という聞きようによってはイヤミな物言いをして。
そこでいまさらながら、「上方」という言葉を思い出した。
WRさんも知ってのとおり、こちらは関西圏で十二年間暮らした(そしてもう二度と「住む」ことはないと思う)けど、その頃からの自分自身の実感でもそうだし、世間一般の使用頻度からしても、「上方」という言葉は死語ではないよね。天皇が東方に行ってもう百数十年経つのに、「上方」近辺の若いコたちにも通用する言葉だと思う。
となると、根強く「上方」がある以上、いまだに「しもかた」のあるのかな、と。
これまたWRさんも知ってのとおり、こちらは日本最北端の利尻島で生まれ育ったわけで、直線距離でいくと日本国中で「上方」から最も遠い場所に、そこはある。 子供のころ無邪気に遊んでいた土地は「下つ方」の人間が住む「下方」の場所であったかも知れず、なんの因果かそんな出自の人間が、これまた無邪気(いい歳をして)に「上方」に住み・働き・家庭まで持ってしまった。ついでにたまに文楽を観に行くことも覚えた。
結局、自分にとって「上方」での暮らしは、北海道に暮らす今、どんな意味を持っている(いく)のだろう?
WRさんとは、去年の11月24日吉祥寺で会ったのが、確か直接会った最後だよね。 あのときも、そのわずか4日前、大阪の文楽劇場で「心中天網島」を観てる。 ご存知のとおり、去年の11月といえばタルバガンの面々は北海道・東北・関西・東京とツアーを続けていて、こちらはその東北以外の日程に同行した。
仕事、なんだけど、どうも、仕事以上に「旅」なんだよね。
で、そこが私の悪い癖(?)、なんだけど、「旅」は楽しい、と感じてしまう。心底 「旅」が楽しい。 極端に言ってしまえば、「旅」しか楽しくない。 一般論で言えば楽しんで金儲けできるわけもなく、当然の報いで、ずっと金銭的な苦境が続いているんだけど、家族もいるのに、それでも止められない。
も一つ、どうもたとえば去年の11月の「旅」なんかは「旅の中の旅」なんだよね。 つまり、実感として、「下つ方」利尻島を離れてから、それは十五の春でした、四十八歳の今まで、一つの大きな「旅」が続いている。 基調・通奏低音としての旅。 その中に折々小さな「旅」が入り込んで(いちいち旅「」もめんどくさいので、もう普通に旅にしますが)いる。 1980年前後、六年間続いた東京方面での旅の時間に、ぼくはWRさんに出会ったわけ。 そして、上方(こっちも「」略)への旅、故郷利尻島への旅、等々、小さな旅がいまだに企てられている。
旅の入れ子状態。 大きな波の波形の中に含まれる小さな波(とその波形)。
「今日まで二人は 恋という名の 旅をしていたと 言える」なんて、安井かずみさんの歌詞(歌はジュリー、沢田研二の『危険なふたり』)もあるから、みんな旅ぐらいしてる(ホンマか?)んだろうけど、よりによって「上方」最前線と「下つ方」最後方で暮らして、いまだに行ったり来たりして、どちらの土地も大好きっていう、自称「旅人」ってどうなんだろうね。 そうそういないような気もするし。 そう思うのは自意識過剰の思い上がりだなという気もするし。
あと、上方の人達の「上方」意識と、それ以外の地域の「下つ方」意識のあり方とか気になるね。 一部の上方の人達の複雑な「東京」への意識もあるし、一部の東京人の「上方」への無理解・無関心のあり方も面白いね。
WRさんは、あの大学への入学以来、ずっと首都圏に住んでいるんだよね? 「「旅」してる感じ」、って、日々の暮らしの中に、ある? そしてそこは、「上方」だと思う、「下つ方」だと思う? WRさんは、どこの人?
「一度でいいから見てみたい、女房がへそくり隠すとこ。歌丸です」
下つ方、上方、TOKYO、それぞれ違う笑いが起こりそうな気がする。
一部、まったく笑わない土地(どことはいいませんが)もあるかも。
一部、TVの追体験する快感に笑わされる人たちの土地(どことはいいませんが)もあるかも。
一部、定型句の定型句たるを楽しむ感覚で笑う人もいるかも。あ、オレか・・・。
ではでは。
どうぞご自愛ください(これまた? 定型句なんだけど、今回は特に切実に)。
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