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20071011 「民藝」 46号・1956年10月・初期洋風建築


表紙:木版画 国立第一銀行 川上澄生作

目次
[日本民芸館の二十年]/[民芸館創立二十周年]柳宗悦/[長崎の洋風建築]田川憲/[九州の初期洋風建築を訪ねて]野間吉夫/[明治時代の京都の洋館]皆川泰蔵/[明治の洋風建築と風俗]木村荘八/[初期洋風建築]川上澄生/[東京に残る明治の洋風建築]横山政男/[秩父のフランス式学校建築]大川原正見/[倉吉の成径小学校]長谷川富三郎/[最古の新潟税関庁舎]田中豊太郎//随筆/[銀座のお地蔵様]伊東安兵衛/[窯場の思い出]出口孤城/[ぜんもん部屋]冬野旅人/[北国の民芸運動]小寺平吉/[土蔵の宿]林弥衛//[丹波の穴窯]岩野俊夫/[浜べんとう]村上さち子/...


[明治時代の京都の洋館] (18-19頁)から

発刊時の時代背景を知るには : 1956年


[初期洋風建築 という課題に寄せる作文]川上澄生 (24-25頁)から


[東京に残る明治の洋風建築](28-29頁)から

テキスト引用:
25-27頁 [初期洋風建築 という課題に寄せる作文]川上澄生

「 私は一八九五年に横浜で生まれ四才位の時に東京に移り住んだ。横浜から東京へは勿論汽車に乗って新橋駅で降りたにちがいない。新橋ステーションは立派な停車場であった。石造の二階建で、建物の中には人の声が響き下駄の音が響いていた。明治五年に東京と横浜の間を汽車がは走ったわけであるから随分古い西洋建築である。築地ホテル館の昔は知らず私の記憶に残る西洋建築は新橋駅が一番古い物であろう。私が成人するまでこの新橋駅から何辺汽車に乗り又幾度汽車を降りたことだろう。

 品川から浅草まで通っていた鉄道馬車は新橋駅の横を通り銀座の煉瓦を走った。新橋の袂に博品館という勧工場があった。私の知ってる勧工場はその他に芝にも上野の広小路にもあり、神田には南明館と東明館とあり九段にもあった。これは百貨店の前身みたいなものであるが、幾つにも区切られた主人公のちがう小店が隣合って居るのが後年の百貨店とはちがうのである。二階建か或は三階建のものがあったかもしれない。とにかく外観は煉瓦を主とした西洋流の建物であった。二階へ登るのに特別に階段があるわけでなく、両側の店を眺めながらゆるい坂を登って行ったような気がするのである。歩るく道は何も敷いていない土の道でそれがたたきのように固くなっていて多少の凹凸があったようだ。やはり一番にぎやかな所は小間物店や文房具や玩具の店の辺りで、出口に近い勝手道具などの店の辺りは人通りも少ない淋しい所であった手桶やたらいが並べてある景色は私の夢の中にもしばしば現われた。

 私は日本橋の通旅籠町に一寸住み神田の西小川町九段の隣の中坂の中腹に住みそれから青山に移ったのであるが、神田暮らしは大体が小学校以前なのであまり記憶がない。然し神田の錦輝館に父に連れられて活動写真を見に行ったことを憶えている。恐らく初期の映画だったのだろうが、画面に白い運動服を着た人が次から次と現われて木馬を飛び越したことを憶えて居る。その時に見た西洋操り人形にも驚きの眼を見張ったことだった。大きな毬が飛び交い、ボンネットをかぶった婦人のスカートが落ちてその人形は赤い顔をして引込んで行った。その錦輝館も煉瓦の建物だった。九段の隣り坂に住んでいた頃、出入りの薪屋さんに連れられて兵隊屋敷へ行った。そして牛肉の入った味噌汁を御馳走になった記憶がある。田安門か竹橋かどっちだったか記憶にないが、とにかく兵営は赤煉瓦たった。(つづく)」



 民藝 46号は、ブックスボックス 田原書店 で、販売中(一部限り)です。

HW5043 民藝 46号 初期洋風建築 (表紙:木版画 国立第一銀行 川上澄生作) 昭和31年10月号 1956 東京民藝協会
500円

 ご購入ご希望の方は、ブックスボックス 田原ヒロアキまで、直接メール yoro@booxbox.com でお申し込みください。 送料300円です。


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