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20080309 賢者の言葉・都築響一・「アマチュアのすごさ」

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  『アートの仕事 太陽レクチャー・ブック004』 (平凡社 2005) より、
 都築響一のレクチャー[アートと人生の関係]より「アマチュアのすごさ」を引用。 
都築 アマチュアの力に、僕はすごく敬意を払って見てるんだけど、写真産業って、アマチュアが支えてるわけよ。アマチュア写真家たちにとって、重要なテーマがあって、蒸気機関車、富士山、高山植物、子供、犬猫、あと、お祭り。それを30年くらい撮ってて、たまると自費出版の写真集をつくり、親戚に配って迷惑がられる、みたいな感じなんですけど。そうしたクズ写真集があまたあるなかで、なかにはすごいものもあるわけよ。でも、そういう人たちは、なかなか表に出てこない。そこをなんとか探し出すのが、僕の役割なんですよね。いろいろ探したなかからひとり紹介したいんですけど。僕とアーティストの大竹伸朗くんとで、「朝日カメラ」の編集部に3ケ月くらい通って、投稿写真でボツになったもののなかから面白いのを選んで、「神様はボツに宿る」って企画をやったんです。そのとき特選にしたのが、北村公さん。1930年生まれで、今年74歳。掲載したら、すぐに手紙が来て、「ようやく私の理解者が現れた」って。北村さんは東京芸大の油絵科を出てて、大学では小磯良平に指導を受けてたんだけど、小磯先生から「キミの絵には、切迫感がない」と言われ、たまたまモデルの女の子が持っていたコンパクト・カメラを借りて写真を撮ってみたら面白かったんで写真に転向した、って人なんですよ。家が資産家だから、働く必要がない。人生、写真撮ってるだけなの。しかも特異な写真しか撮らない。素人のモデルを雇い、女体写真だけを撮って生きてる、男道を行っている人なんですけど。北村さんは、ラブホで撮るのが好きなんです。普通、素人のモデルを使うときは、後で目線を入れればいいやって発想なんだけど、この人の場合は、作品を発表することを考えていないし、最初から顔が隠れているほうがいいっていうので、頭からビニール袋をかぶせたり、顔を布でグルグル巻きにしたりするわけ。「これでモデルさんは安心するんですよ」とかって言うんだけど、そりゃ安心するけど、そのせいで異常な効果を生んでると思うんだよね。これ、5メートルくらいの写真にして展示したら、すごくカッコいいよ。こういう作風の人でテリー・リチャードソンとかいますけど、僕は北村さんのほうがすごいと思うんだけど、写真界には出てこないんだよね。北村さんはちゃんと自分の「写真信条」をつくっていて、「自己満足を旨とすべし」とか「モデル代は節約すべからず」とか、心に響く言葉はいろいろあるんだけど、とくに僕が好きなのがあって、「一点傑作主義を排し、駄作の海に沈没してこそ写真の楽しみは殊に深かるべし」。北村さんは昔、70年代頃に写真を細江英公さんに見てもらったことがあるんだって。そのとき、「たくさん撮って、そのうち1枚傑作をつくる、1点傑作主義をめざしなさい」とアドバイスされて、カチンと来たって言うんだよね。「1点だけ傑作をつくる」というのは、それを金に換えることを考えているプロの発想だと。でも、北村さんはお金はあるから、「別にいいの。傑作つくんなくても」ってことで、それを聞いた瞬間から、「生涯を懸けて、駄作の海に沈没することを決めた」っていうから、すごいって思ったんだよね。これはもうプロにはできないことなんだよね。考えてみれば、作品でなんとかしたいっていうのは、プロの根性で、撮ることが楽しいんだから、それが傑作かどうかなんて、誰が決めるのって話でさ。やっぱ、「こっちのほうが勝ってる」って気がすごくしたわけ。これがアマチュアのすごいところですよ。プロとアマチュアの違いはどこにあるかっていうとね、プロっていうのは「止めどころ」を知ってる人たちなの。「ここまで来たら、望まれてる最高のものができる」って。でも、アマチュアっていうのは、そこまで行けないか、あるいは越しちゃうか、どっちかなんだよね。たいていはそこまで行けないんだけど、ときには越しちゃって、とんでもない世界に突入しちゃうことがあるわけよ。それはアマチュアの力なんだよ。それを僕たちはバカにしがちなんだけど、プロであっても、アマチュアから学ぶことって大きいんだよね。



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