« 20080913 ブックスボックス 田原書店・棚出し&お買上・「柳宗悦―美の菩薩」~「トランプ―ひとり遊び88選」 | トップページ | 20080916 田原書店ノマド・大貫妙子+ピーター・バラカン・マーヴィン・ゲイ »

20080914 賢者の言葉・鶴見俊輔と中学生たち『大切にしたいものは何?』・「ムダでない時間って」

   * [大切にしたいものは何?―鶴見俊輔と中学生たち (みんなで考えよう)]



 『大切にしたいものは何? みんなで考えよう 1』 鶴見俊輔と中学生だち 絵:南伸坊 (晶文社 2002)
「3 マンガって何?」 より、「ムダでない時間って」一部引用
 鶴見 無駄な時間、ですか……。ムダな時間とムダでない時間って、よくいわれますね。ムダでない時間って、どういうことなんでしょう。どうですか?

 マミ 親がいうには、ムダのない時間って、やらないといけないこと。たとえば、自分が食べた食器を洗うときとか。でも、洗わないで部屋にこもってマンガを読んでいると「何をやってるの」と怒られる。そっちがムダな時間で、とにかく勉強していると何もいわれない。

 鶴見 食べた食器を洗うというのは、とても重要なことだと思う。生きていくためにはね。ところが、勉強をしているときはムダナ時間じゃないっていうのが、わたしには不思議な感じがします。
 子どもが勉強ばかりしていたら、恐ろしいですよ。一日のうち、寝るのが8時間として、16時間勉強していたら、どういう子どもになるだろうなって、思いますね。わたしだったら、ほんとうに恐怖します。塾がテーマのとき、塾に行く時間は損だという話もあったね。
 もう少し、ムダのない時間というのを整理してみたいですね。

 マイコ わたしは、マンガは自分のためになるっていうか、すごい楽しいことだし、テレビでドラマをみていても、自分で感じることがあったら、それはムダではないと思う。でも、親の考えでは、勉強は自分のためになるけど、マンガはたださぼっているというか。わたしは、そのさぼっているというか、休憩の時間もムダではないと思うから、そういうところが親とあわない。

 鶴見 楽しいことをしているのは、ムダな時間だという考えかたが親と先生にあると思うんですが、みなさんは、どう思いますか。人間が生きていくうえで、いい考えかただと思いますか。楽しくなくても、生きていくために必要だから、それはしなくちゃいけない。このことは、わかりますね。だけど、楽しいことをしているのは、ムダだという考えかたは、どうなんでしょう。

 カナコ 自分がこれをやりたいと思ってやっていることだったら、勉強でなくても、友だちと遊んでいるときでも、それはムダな時間じゃないと思います。

 マイコ わたしも同じですよ。

 鶴見 やっぱり、みんな、そう思っているんだ。わたしは、76歳まで生きてきたんですが、……子どもと大人が一緒にマンガを読むのはむずかしいね。読むスピードがちがうでしょ。それは、英語の本をイギリス人と日本人が一緒に読むのにとても似ているね。一緒に読むことは、イギリス人にとっても苦痛でしょうし、日本人にとっても苦痛でしょう。そういう問題が、マンガについてもあるんですね。それは、おそらくコマ割りということなんです。
 マンガ専門の出版社の、もう亡くなってしまったんですが、『ガロ』という出版社の長井勝一さんという社長がいっていたんですが、素人の人が会社にマンガをもちこんでくるとね、絵がうまいかどうかでは判定しないんです。コマ割りなんだという。30年仕事をやってきての感想なんですね。ほら、マンガのコマ割りって、楽々といってる感じ、音楽にとても似てるでしょう。
 長井さんは、「コマ割りの巧みさをみて、これはのびるだろう」と。そういうことで、マンガ家とずっとやってきたんですね。長井さんがやってきた『ガロ』というマンガ雑誌からは、水木しげるも白土三平もつげ義春もでてきたんです。新しいところでは、南伸坊も渡辺和博もね。この2人はそれぞれ『ガロ』の編集長だった。
 コマ割りの不規則性。それが、まじめな大人にはたえられないんですよ。まじめな大人が訓練したものとぜんぜんちがうから、弾圧したくなるんでしょうね(笑い)。だけど、赤ん坊が人生に対する態度って、そういうものでしょう。みたことのないものが、目の前でチラチラととびかう。赤ん坊は、なんとか、それを処理していくわけですからね。
 コマ割りを読みとる能力というのは、人間が生きるうえで、とても重大なことなんですね。本を読む能力とちがう。コマ割りを読みとっていくのと、本を読むのとどちらが重大かってことはいえないですよ。わたしは、そう思います。まじめに教育を考えると、そうだと思う。
 じっさい、本なんてぜんぜん読まない生活に入ったときは、自分のまわりの世の中のことをみてとるってことは大切なことでしょ。スポーツだってそうでしょう。気合いでやりますね。相手をパッとみた瞬間の気配で、どう動いていくかを決めるでしょ。ボクシングも、すもうも。
 マンガを読む場合もそうでしょう。それは、学校の教育とはちがう。ちがうんですけど、生きていくうえで、どちらが大切かという問題がありますね。わたしは学校本位の教育は大変たよりないところがあるのではないかと思っていますけどね。
 大人の主婦の金城さんは、マンガ、どうですか?

 金城 娘は21歳ではが、マンガ大好きです。わたしむき。といっては、たとえば萩尾望都のマンガを買ってくるんですね。読んでいると、マンガがドラマや小説になるのがわかります。やっぱりおもしろい。

 鶴見 子どもがマンガをもってきて、親に読ませるというのは、とても健全だと思う。わたしは、子どもからよくマンガを教えられたんですよ。山上たつひこもそう。はじめて読んだのは、『旅立てヒラリン』。これは、日本で最初のエコロジー・マンガだと思うんですよ。お鍋のバケモノのアルフレッド・ハウゼというのがでてきて、放射能で変わっていくというマンガなんですよ。すごくおもしろかった。作者はしばらく書くのをやめてね、つぎに『光る風』を書いたんだね。息子は、そのマンガもまたもってきてくれてね。この作品、自衛隊がクーデターをおこして、日本が軍国主義国家になる話なんですよ。それからまた、しばらく書くのをやめちゃって、そのつぎが、『がきデカ』なんです。その変貌はすごくおもしろくて、作者はいまではもうマンガはやめて、小説を書いているんですが、この人を息子から教えられて、わたしは、それを飯の種にしてきたんです。くりかえし、この『がきデカ』にふれてきた。『がきデカ』のおもしろさを教えてくれたのは、息子だったんです。4つか5つのときに、わたしを教育してくれていた。
 「子どもは親の教師」という考えかたも、マンガをとおしてでくるはずなんですけどね。英語の達人って、じつはあまり英語のできない人だったりすることもある。それが親にわからなかったり、教師にもわからなかったりする。そういう問題なんです。(後略)  



鶴見俊輔@Wikipedia

南伸坊@Wikipedia

19980420 山上たつひこ 『光る風』

*    *

|

« 20080913 ブックスボックス 田原書店・棚出し&お買上・「柳宗悦―美の菩薩」~「トランプ―ひとり遊び88選」 | トップページ | 20080916 田原書店ノマド・大貫妙子+ピーター・バラカン・マーヴィン・ゲイ »

04 賢者の言葉」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/6458/42518622

この記事へのトラックバック一覧です: 20080914 賢者の言葉・鶴見俊輔と中学生たち『大切にしたいものは何?』・「ムダでない時間って」:

« 20080913 ブックスボックス 田原書店・棚出し&お買上・「柳宗悦―美の菩薩」~「トランプ―ひとり遊び88選」 | トップページ | 20080916 田原書店ノマド・大貫妙子+ピーター・バラカン・マーヴィン・ゲイ »