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20081015 賢者の言葉・山田風太郎 『戦中派焼け跡日記』・昭和21年12月4・5・6日

   * [戦中派焼け跡日記―昭和21年] 山田風太郎



 『戦中派焼け跡日記』 山田風太郎 (小学館 2002)」 より、昭和21年12月4・5・6日分、引用
 四日(水)雨

 いつまでたっても雨がやまぬので濡れるを覚悟でモチゴメ一升、アズキ一升貰って河江出発。雨一寸やんでばざーっ渡ってゆく。法華寺の峠を越える時さんざん降りかくれる所もなくオーバー頭よりかむってびしょ濡れになる。道々大根を担った百姓数人に逢う。江原についたら晴れた。本屋で雄鶏社の木々高太郎監修推理小説叢書第一輯、江戸川乱歩『柘榴』求む、十五円也。内容『柘榴』あんまり構造が典型的で話がうまく仕組まれすぎて感銘少なし、『白日夢』『火星の運河』小品『双生児』『二廃人』大したころなし、『蟲』昔読んだ時ほどの感銘なし、やはり一番面白いは『心理試験』か。乱歩は犯罪心理学、指紋、夢遊病、あらゆる犯罪のタネを相当よく研究し利用しつくしている。しかし利用にすぎない。一作一作世界の探偵小説界空前のトリックといったものが少ない。第一人者乱歩にしてしかり、日本人の素質の限界か。
 江原より八鹿までバス、八鹿より関宮へバス日暮につく。バスの中で田舎の理論家達の話。誰が一番可哀そうであるかについて。
「そりゃ青年らあじゃで。戦争でコキ使われて、戻って来りゃ、見んされ日本の有様あ、楽シカルベキ青春にじゃで、甘いもなあなし、紅白粉あなし、酒あなし、娯楽あなし、米じゃの芋じゃのに追いまくられて、一生一度の青春メチャクチャじゃ」
「うんにゃ年寄りじゃ、青年らあはまンだ未来ちゅうもんがある、けんど年寄イ見んされ、年あ寄って棺桶ア近エのに、食いたいものあ食われず早よう死ねがしに取扱われて、死んでもロクに葬式もして貰えん、年寄りほど望むみのねエ面白うねエ日を暮しとるもなあねえデ」
「けんど、そりゃ青年らにいわせたら、年寄りあ若い間にサンザンうめえ目をしとるもの……一番可哀そうなのは子供らあじゃ。青年はまンだマンジューの味イ知っとる。子供見んされキャラメルも飴玉も知らん。わしゃこないだ一本二十円のチクワ買って帰ったんじゃが、うちの子供あチクワ知らんのじゃ。そりゃトーフじゃというて聞かん。涙がこぶれるわ」
「うんにゃ、子供はまンだ甘えもの知らんからいいんじゃ。知らんものは知っとるものよりも苦しくねえで」
「いや、そりゃ大人の目から見た判断じゃ。知らんこと、それが可哀そうなんじゃ」
「――みんな、日本人は、みんな可哀そうなんじゃ!」
と誰かが結論を叫んで車中大笑い。それからゼネストは日本をほろぼすもとだから絶対いかんという人と、人間の自由を論じてやまざる人との生ぬるい論争。結局今のゼネスト騒ぎは戦争中の軍閥の弾力の反動で、その中だんだんおさまるだろうという。そして先日発表された徹底的な惨忍酷薄な賠償案の内容から、ここに生きている人々の一生はおそらくつづくであろう惨憺たる生活の予想へ話が移ってまた暗い沈黙。揺れるバスの破れた硝子窓の外は暗い初冬の雨がふっている。


五日(木)快晴夕曇

 奴隷と小児と女は同一階級に属すべきものである。(アリストテレス)
 女は人類と動物との中間に位するものである。(プラトン)
 女に愛せられるのは男に憎まれるより恐るべきものである。(ソクラテス)
 女の心を動かすのは
 該博な知識ではない
 また青年の雄偉な肉体でもない
 ただ黄金の力よく少女の淑徳を動かすべく
 富の力は如何なる女の眼をも眩ませることが出来る。(西洋の詩)
 男が一年間熟考したことを、女は唯一日間に破壊する。(デモステネス)
 汝の小舟を風にまかすとも、汝の赤心を女に吐露するなかれ
 波も美しき人の約束に比すればなお偽ることなし。(シセロ)
 女は男に比して軽信にして猜疑心強く兇悪にして偏執なり。その心中には男子の夢想もせざる奸計を蔵し虚栄のために罪悪を犯し軽浮気髄にして、反覆常なきものなり。(セネカ)
 女が男に勝っているのは唯悪事に関してのみ。(パブリュース・サイラス)
 女と約束をしようとする時はこれを風か水に記するがよい。(カール)
 恐るべきは瞋恚の語ではなくて女の涙である。(カトー)
 或人曾て名優ソポクレスに向いてその技を賞し、君が扮する婦人は淑徳あり怜悧なるがごとく見ゆるも、オイリピデスの扮する婦人は常に嫌悪すべき性格の婦人となるといえるに対し、ソポクレス曰く、これ畢竟オイリピデスは婦人の性格そのままに演ずるも、余は常に婦人たる者斯のごとくなるべしと思いて演ずればなりと。
 軽薄なる者よ汝が名は女なり、女の恐れと愛は限りなきものにして、これある時は甚だしきに過ぐれども、これなく時は絶無なり。(シェークスピア)
 女は最も完全な悪魔である。(ユーゴー)
 女は造化の神の美しき失敗作である。(ミルトン)
 女は常に最後の断案を得ようとしても未だ曾てこれを得たことがない。(ロバート・ファルク)
 そは何故なりやという質問に対し女は常に同一なる答をなす。而してこれ女の答え得べき最大の答弁にして曰くこれそのごとくなればなりと。(バルザック)
 婦人は一般に芸術を愛することも理解することも出来ない。即ち婦人は芸術上の天才たり得ない。(ルソー)
 女はいずれの国にあっても迷信の扶助者なり。(トプイス)
 女は困らなければ決しておとなしくなるものではない。(ジュべナル)
 女の一念岩をも透す、男の一念寝間に糞垂れる
 女の意志は屈服すべきものにして説破すべきものにあらず
 女は論理を解せざるものにして痙攣と涙と接吻の外結論することを知らざるものなり。(ボーデンステット)
 女は趣味、心情、理性等は普通にこれを具有することが出来るけれども唯判断力のみは皆無である。故に裁判所に女判官が現われるならば吾人は戦慄してこれを恐怖しなくてはならない。しかし、もし婦人弁護士が現われたならこれほど強力なものはない、殊に裁判官が柔弱なる男子である時その効がある。(P・J・スタール)
 女は世事に全く無関心である。が、世間から無関心でいられることを欲しない。(フェリス・ダン)
 神が人を創造し給うた時その無限なる聖智によって婦人に髯を与え給わなかった。何となればもし婦人に髯があるならばこれを剃る時彼女はどうしても黙らなくてはならぬからである。(A・ヅマス)
 女はそのなせるあやまちを後悔するを楽しみ、その再びなし得ざるを追恨する。(ド・ベルナルド)
 女は総てその夫をして少なくとも一日一回はその妻に迎えたるを後悔させるものである。(ゲオルグ・エベルス)
 余は女の接吻する時最もこれを愛する。何となればこの時だけは彼女も黙するからである。(ナッシンスキー)
 軽躁、浮薄、淫蕩、虚偽、詭計、狡猾、悪口、虚栄これらのものから巧みに紡いだ精微なる糸をもって造化の神の織りなせる絢爛だるもの、これを名づけて少女という。(ザヒール)
 女はその同性を愛しない。而してその欠点を批判すること男子の観察の粗慢なるに比して更に深刻惨忍なものがある(ジェアン・パウル)♀
 女の柔和なのは唯憤怒によって醜くなるのを恐れるが為のみ。(ジョルジュ・サンド)♀
 美人は古来愚鈍たるべき特権を有す。(イダ・ハンハン)♀
 女は原因なくして嘆くことが出来る。女は予め謀ることなくして偽ることが出来る。女は泣かんと欲するとき涙を流すことが出来る。これは男には与えられない徳である。
 汝の妻を打つこと唯一日なるも、汝はその為一年泣かなくてはならぬであろう。(ロシアの諺)
 女の路は唯竃と閾の間にある。(ロシアの諺)


六日(金)朝晴、後次第曇

 探偵小説腹案 ①眼中の悪魔(暗点の応用) ②半陰陽の応用 ③空中より降る□ ④東京のガス制度の応用。
 終日褥中にあり鷗外全集などとりとめもなく繙く、午後くもれる空にかなしげなる風鳴り粉雪ちらつく、冬いよいよ来れり。



   山田風太郎@Wikipedia

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