20080930 田原書店ノマド・最終回 二年半ありがとう・生きることの肯定

 毎週火曜日・午前十時半は、ブックスボックス 田原ヒロアキの、FMアップル「田原書店ノマド」の始まる時間、でした。

 2008年9月30日、「田原書店ノマド」@FMアップルは、最終回(閉店)です。

 放送開始の2006年4月から、早二年半。ありがとうございました。

 最終回の選曲は、心身ともに健康な、オシドリ音楽家夫妻の曲をそれぞれ一曲ずつ。

   * [Expressions] 竹内まりや

 竹内まりやさんの最新アルバム 『Expressions』 ライナーノーツの山下達郎さんの言葉。

(前略)

竹内まりやの作品には、市井の人々が経験する出会いや別れ、喜びや悲しみ、愛情、友情といった、さまざまな情景が描かれ歌われていますが、それと同時に彼女の歌の中には、あるひとつのテーマが常にこっそりと内包されています。

それは「ひとが生きて行くことへの強い肯定」です。

ポップ・カルチャーの本質は、つまるところ「生きることの肯定」だと思います。

(後略)



一曲目
 「天使のため息」 竹内まりや CD『Bon Appetit!』 より

   * [Bon Appetit!] 竹内まりや


二曲目

 「世界の果てまで」 山下達郎 CD『トレジャーズ』

   * [TREASURES] 山下達郎



 「田原書店ノマド」は、ブックスボックス/田原書店の田原ヒロアキ * が担当する、音と言葉の情報番組でした。
 毎週火曜日午前十時半からでした。

 出演:田原ヒロアキ@ブックスボックス
  福津京子さん:http://www.fukutsu.net/ *

 ありがとうございました!

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20080923 田原書店ノマド・札幌(古書籍商組合とD&DEPARTMENT)・遠山サキさん母子

 毎週火曜日・午前十時半は、ブックスボックス 田原ヒロアキの、FMアップル「田原書店ノマド」の始まる時間。
 インターネットで聞けます(見られます) : http://www.channel-apple2.com/streaming_apple.html

  

 2008年9月23日の放送は、17日:「札幌古書籍商組合」に加入した「ブックスボックス 田原書店」田原の初の古書交換会参加と、20日:初めて訪れた「D&DEPARTMENT 札幌店」の話を。曲は、浦河町から届いた、遠山サキさん母子のCD『アネサ シネウプソロ(姉茶 ひとつのふところ)』から。

 札幌の古本屋 札幌古書籍商組合

 D&DEPARTMENT PROJECT SAPPORO by 3KG



タイム・テーブル

 10:30~10:34 「この一週間」 コーナー
 
 10:34~10:38 一曲目 「ニカタク」 遠山サキ(母80歳)・弓野恵子(長女)・床みどり(次女)・堀悦子(三女) from CD [アネサ シネウプソロ(姉茶 ひとつのふところ)]

ニカター クイクイ ハチリナ ウパシ コネ ルプネ
(木の枝の上に雪が積もり、その雪が落ちて弾けている)

 10:38~10:42 今後の「ブックスボックス 田原書店」の話

 10:42~10:46 二曲目 「カムイ リムセ」 遠山サキ(母80歳)・弓野恵子(長女)・床みどり(次女)・堀悦子(三女) from CD [アネサ シネウプソロ(姉茶 ひとつのふところ)]

ホイッア~ トゥンケ ホイッアオー ホイッア~ ルルサン ホイッアオ
(熊神の前で歌う、熊を慰める歌)

 10:46~10:50 「D&DEPARTMENT 札幌店」に初めて行って、3KGのディレクターのS氏と「民藝」に関する話した話

 10:50~10:54 三曲目 「アトゥイ ソー」 遠山サキ(母80歳)・弓野恵子(長女)・床みどり(次女)・堀悦子(三女) from CD [アネサ シネウプソロ(姉茶 ひとつのふところ)]

アトゥイソー カタ カイクマソー テリケ
(海の上で、ウサギが跳ねている。「海の白波がウサギのように見える為」)

 10:54~11:00 「お知らせ」 コーナー



 「田原書店ノマド」は、ブックスボックス/田原書店の田原ヒロアキ * が担当する、音と言葉の情報番組。
 毎週火曜日午前十時半から。

 インターネットで聞けます(見られます):
  http://www.channel-apple2.com/streaming_apple.html *

 出演:田原ヒロアキ@ブックスボックス
  福津京子さん:http://www.fukutsu.net/ *

 どうぞお楽しみください!

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20080916 田原書店ノマド・大貫妙子+ピーター・バラカン・マーヴィン・ゲイ

 毎週火曜日・午前十時半は、ブックスボックス 田原ヒロアキの、FMアップル「田原書店ノマド」の始まる時間。
 インターネットで聞けます(見られます) : http://www.channel-apple2.com/streaming_apple.html

   * [ホワッツ・ゴーイン・オン] マーヴィン・ゲイ

 2008年9月16日の放送は、サッポロショートフェスト2008の話題を。曲は、マーヴィン・ゲイ 『ホワッツ・ゴーイン・オン』から。

 SAPPORO SHORT FEST 2008 第3回札幌国際短編映画祭 http://www.sapporoshortfest.jp/



タイム・テーブル

 10:30~10:35 「この一週間」 コーナー
 
 10:35~10:40 一曲目 「WHAT'S GOING ON」 Marvin Gaye from CD [WHAT'S GOING ON]

 10:40~10:50
   話 その1 SAPPORO SHORT FEST 2008 第3回札幌国際短編映画祭 14日「音楽と映画とエコロジー」
          大貫妙子さん、ピーター・バラカンさん、と久保俊哉さんのトーク
          バラカンさんが着ているTシャツの絵柄が、マーヴィン・ゲイだった。
   話 その2 SOS ライブアースショートフィルム

 10:50~10:55 二曲目 「INNER CITY BLUES」 Marvin Gaye from CD [WHAT'S GOING ON]

 10:55~11:00 「お知らせ」 コーナー



 「田原書店ノマド」は、ブックスボックス/田原書店の田原ヒロアキ * が担当する、音と言葉の情報番組。
 毎週火曜日午前十時半から。

 インターネットで聞けます(見られます):
  http://www.channel-apple2.com/streaming_apple.html *

 出演:田原ヒロアキ@ブックスボックス
  福津京子さん:http://www.fukutsu.net/ *

 どうぞお楽しみください!



おまけ: 凄過ぎる・・・、何度見ても何度聴いても飽きない、マーヴィン・ゲイのAmerican National Anthem 三題

    Marvin Gaye sings American National Anthem @ YouTube
    

    Marvin & Nona Gaye - National Anthem (Nba Allstar-Game 2004) @ YouTube
    

    Nike Basketball Commercial @ YouTube
    

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20080909 田原書店ノマド・大麻・タイマーズ

 毎週火曜日・午前十時半は、ブックスボックス 田原ヒロアキの、FMアップル「田原書店ノマド」の始まる時間。
 インターネットで聞けます(見られます) : http://www.channel-apple2.com/streaming_apple.html

   * [イラストポスター『セイブアワメンタリー』]

 2008年9月7日の放送は、話題(?)のロシアン・タイマーズこと三人の大相撲力士にちなんで(??)、大麻の話をしました。曲は、当然、ザ・タイマーズ。



タイム・テーブル

 10:30~10:34 「この一週間」 コーナー
 
 10:34~10:38 一曲目 「タイマーズのテーマ」 ザ・タイマーズ from CD [ザ・タイマーズ]

   * [ザ・タイマーズ] ザ・タイマーズ


 10:38~10:42 話


 10:42~10:46 二曲目  「デイ・ドリーム・ビリーバー~DAY DREAM BELIEVER~ 」 ザ・タイマーズ from CD [ザ・タイマーズ]


 10:46~10:50 話


 10:50~10:54 三曲目 「総理大臣」 ザ・タイマーズ from CD [ザ・タイマーズ]


 10:54~11:00 「お知らせ」 コーナー



 「田原書店ノマド」は、ブックスボックス/田原書店の田原ヒロアキ * が担当する、音と言葉の情報番組。
 毎週火曜日午前十時半から。

 インターネットで聞けます(見られます):
  http://www.channel-apple2.com/streaming_apple.html *

 出演:田原ヒロアキ@ブックスボックス
  福津京子さん:http://www.fukutsu.net/ *

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20080902 田原書店ノマド・ゲストにアイスランドのアーティスト・[マグノス・スヤープヘッドインスソン MAGNUS SKARPHEDINSSON] さん

 毎週火曜日・午前十時半は、ブックスボックス 田原ヒロアキの、FMアップル「田原書店ノマド」の始まる時間。
 インターネットで聞けます(見られます) : http://www.channel-apple2.com/streaming_apple.html

   マグナスさんの「MySpace」 -Mongoose Experimental / Electronica / Blues-

 2008年9月2日の放送は、アイスランドのアーティスト、マグノス・スヤープヘッドインスソン MAGNUS SKARPHEDINSSON (1982- )さんがゲスト。彼の音楽作品を聴きながら、札幌での創作活動についてお話をうかがいました。

■ MAGNUS さんは、8月1日より9月30日までの2ヶ月間、[ ICC+S-AIR 2008 創造資源開発事業(アーティスト・イン・レジデンス*文化庁メディア芸術ラボラトリー支援事業)により、札幌市に滞在中。
   S-AIR : http://www.s-air.org/
   S-AIR ブログ : http://sair.exblog.jp/
   ICC : http://www.icc-jp.com/ja/

■ ライブと展覧会があります。札幌で、どんな新しい作品を作り出し、どうやって見せてくれるのか、楽しみです。

ライブ・パフォーマンス
日時:2008年9月20日(土) 19:30-
会場:D&D DEPARTMENT (札幌市中央区大通西17丁目1-7)
  D&DEPARTMENT PROJECT SAPPORO by 3KG
 *入場無料

展覧会とライブ・パフォーマンス
日時:2008年9月19日(金)―21日(日)
 *展覧会は12時から19時、パフォーマンスは最終日21日(日)20時より
会場:大通まち×(まちかける)アートセンター OYOYO(およよ) (札幌市中央区南1条西6丁目第2三谷ビル6階:東急ハンズ 西二軒隣)
  - OYOYO - 大通まち×アートセンター
 *入場無料



  
  スタジオ内のMAGNUS さん(右)と通訳の植村絵美さん@「二重奏」

  
  撮影は、小田井さん@S-AIR

  
  放送終了後。田原の手に、CD [Foxbite]。いいアルバムです。撮影は、小田井さん@S-AIR



タイム・テーブル

 10:30~10:35 「この一週間」 コーナー
  田原とMAGNUS さんが出会ったきっかけ。
  日曜日(8月31日)は、江別の野幌太々神楽に、同行・見物。
 
 10:35~10:40 一曲目 「Save it for later」 Mr.Silla & Mongoose from CD [Foxbite]

   CD [Foxbite] Mr.Silla & Mongoose


 10:40~10:50 話
  札幌の印象
  アイスランドとの違い
  今、札幌でどんな創作活動をしている?
  イベント・スケジュール

 10:50~10:55 二曲目  「no innings」 Magnoose


 10:55~11:00 「お知らせ」 コーナー



 「田原書店ノマド」は、ブックスボックス/田原書店の田原ヒロアキ * が担当する、音と言葉の情報番組。
 毎週火曜日午前十時半から。

 インターネットで聞けます(見られます):
  http://www.channel-apple2.com/streaming_apple.html *

 出演:田原ヒロアキ@ブックスボックス
  福津京子さん:http://www.fukutsu.net/ *

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20080826 田原書店ノマド・そういえば毎日五輪大橋の上を通っているのだった・「愛は勝つ」以外のKAN

 毎週火曜日・午前十時半は、ブックスボックス 田原ヒロアキの、FMアップル「田原書店ノマド」の始まる時間。
 インターネットで聞けます(見られます) : http://www.channel-apple2.com/streaming_apple.html

  

 2008年8月26日の放送は、北京五輪を振り返っての話と。曲は、いつでも・無条件に「愛は勝つ」わけでもないだろう、ということで、「愛は勝つ」以外のKANさんの曲を。



タイム・テーブル

 10:30~10:34 「この一週間」 コーナー
  先週の火曜日、アイスランドから札幌に来ているアーティストのマグノス君と話をした話。日本の伝統音楽を聴きたいということで、聴いてもらった「瞽女唄(ごぜうた)」に、「ブルーズ」だという感想をもらしたマグナス君に感心した、というような。

 
 10:34~10:38 一曲目 「めずらしい人生」 KAN

   * [めずらしい人生KAN1987~1992] KAN


 10:38~1042 話・気持ちで勝てる?
  一、実力を反映しなかった、ソフトボールの金と野球のメダル無しの訳は
  二、バドミントンチームへの報奨金 299万9999円 え、選手一人にじゃなく、チーム全体にかよ
  三、四年間継続する精神性と会期中集中する精神性を併せ持つことの困難


 10:42~10:46 二曲目  「言えずの I Love You」 KAN


 10:46~10:50 話・選ばれし者たちの恍惚と恐怖
  凡人はどう生きるか・・・。


 10:50~10:54 三曲目  「Regrets」 KAN


 10:55~11:00 「お知らせ」 コーナー
  8月31日は、北海道マラソン。五輪大橋の程近く、真駒内公園を出発して、FMアップルの前の通り、国道453号線も走ります。



 「田原書店ノマド」は、ブックスボックス/田原書店の田原ヒロアキ * が担当する、音と言葉の情報番組。
 毎週火曜日午前十時半から。

 インターネットで聞けます(見られます):
  http://www.channel-apple2.com/streaming_apple.html *

 出演:田原ヒロアキ@ブックスボックス
  福津京子さん:http://www.fukutsu.net/ *

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20080819 田原書店ノマド・利尻島行き帰り・80年代全英1位ヒットの不滅曲

 毎週火曜日・午前十時半は、ブックスボックス 田原ヒロアキの、FMアップル「田原書店ノマド」の始まる時間。
 インターネットで聞けます(見られます) : http://www.channel-apple2.com/streaming_apple.html

  
  8月8日午後四時、利尻島へ向かうカーフェリー上で、セルフポートレート

 2008年8月19日の放送は、田原の8日から12日までの利尻島行き帰りの話をしました。曲は、今だにいろいろなところで聴く機会の多い、1980年代の全英№1ヒット曲(どちらもやはり名曲)を二つ。



タイム・テーブル

 10:30~10:35 「この一週間」 コーナー
  やっぱり北京オリンピックの話。
 「なでしこ」の報奨金が、四位なら50万円(一人あたり)、三位なら75万円、という報道をうけて、それが多いのかどうか、を福津さんと議論。

 
 10:35~10:40 一曲目 「Perfect」 FAIRGROUND ATTRACTION

   * [The First of a Million Kisses] Fairground Attraction


 10:40~10:50 話・利尻島行き帰り
  一、昆布干しの手伝いをした
    過疎高齢化で人手不足は深刻
  二、たけだりょうさんの海藻押し葉を「島の駅(渡辺商店石倉)」で見た
  三、下の娘の植物採集を手伝った

 10:50~10:55 二曲目  「There Must Be An Angel」 EURYTHMICS

   * [Be Yourself Tonight] FaEURYTHMICS


 10:55~11:00 「お知らせ」 コーナー
  午後、アイスランドのアーティストと、ICCで会うことに。音楽系の作品が多いそうで、ブックスボックス音源と、その他日本の伝統音楽を少し聞いてもらう予定。



 「田原書店ノマド」は、ブックスボックス/田原書店の田原ヒロアキ * が担当する、音と言葉の情報番組。
 毎週火曜日午前十時半から。

 インターネットで聞けます(見られます):
  http://www.channel-apple2.com/streaming_apple.html *

 出演:田原ヒロアキ@ブックスボックス
  福津京子さん:http://www.fukutsu.net/ *

 どうぞお楽しみください!

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20080812 田原書店ノマド・朗読回・詩を三つ

 毎週火曜日・午前十時半は、ブックスボックス 田原ヒロアキの、FMアップル「田原書店ノマド」の始まる時間。
 インターネットで聞けます(見られます) : http://www.channel-apple2.com/streaming_apple.html

   * [手紙] 谷川俊太郎

 2008年8月12日の放送は、当日利尻島行き帰りで不在のため、6日に録音したものをオンエアしました。田原の朗読会(?)の回、とさせていただきました。読んだのは、詩三編。下に引用しましたので、どうぞご覧ください。



I was born     吉野弘
 確か 英語を習い始めて間もない頃だ。

 或る夏の宵。父と一緒に寺の境内を歩いてゆくと 青い夕靄の奥から浮き出るように 白い女がこちらへやってくる。物憂げに ゆっくりと。

 女は身重らしかった。父に気兼ねをしながらも僕は女の腹から眼を離さなかった。頭を下にした胎児の 柔軟なうごめきを 腹のあたりに連想し それがやがて 世に生まれ出ることの不思議に打たれていた。

 女はゆき過ぎた。

 少年の思いは飛躍しやすい。その時 僕は<生まれる>ということが まさしく<受身>である訳を ふと諒解した。僕は興奮して父に話しかけた。
――やっぱり I was born なんだね――
 父は怪訝そうに僕の顔をのぞきこんだ。僕は繰り返した。
―― I was born さ、受身形だよ。正しく言うと人間は生まれさせられるんだ。自分の意志ではないんだね――
 その時 どんな驚きで 父は息子の言葉を聞いたか。僕の表情が単に無邪気として父の眼にうつり得たか。それを察するには 僕はまだ余りに幼なかった。僕にとってこの事は文法上の単純な発見に過ぎなかったのだから。

 父は無言で暫く歩いた後 思いがけない話をした。
――蜉蝣という虫はね。生まれてから二、三日で死ぬんだそうだがそれなら一体 何の為に世の中へ出てくるのかと そんな事がひどく気になった頃があってね――
 僕は父を見た。父は続けた。
――友人にその話をしたら 或日 これが蜉蝣の雌だといって拡大鏡で見せてくれた。説明によると 口は全く退化して食物を摂るに適しない。胃の腑を開いても 入っているのは空気ばかり。見るとその通りなんだ。ところが 卵だけは腹の中にぎっしり充満していて ほっそりした胸の方にまで及んでいる。それはまるで 目まぐるしく繰り返される生き死にの悲しみが 咽喉もとまで こみあげているように見えるのだ。つめたい光りの粒々だったね。私が友人の方を振り向いて<卵>というと 彼も肯いて答えた。<せつなげだね>。そんなことがあってから間もなくのことだったんだよ。お母さんがお前を生み落としてすぐに死なれたのは――。

 父の話のそれからあとは もう覚えていない。ただひとつ痛みのように切なく 僕の脳裡に灼きついたものがあった。
――ほっそりした母の 胸の方まで 息苦しくふさいでいた白い僕の肉体――。



伝説     会田綱雄
 湖から
 蟹が這いあがってくると
 わたくしたちはそれを縄にくくりつけ
 山をこえて
 市場の
 石ころだらけの道に立つ

 蟹を食うひともあるのだ

 縄につるされ
 毛の生えた十本の脚で
 空を掻きむしりながら
 蟹は銭になり
 わたくしたちはひとにぎりの米と塩を買い
 山をこえて
 湖のほとりにかえる

 ここは
 草も枯れ
 風はつめたく
 わたくしたちの小屋は灯をともさぬ

 くらやみのなかでわたくしたちは
 わたくしたちのちちははの思い出を
 くりかえし
 くりかえし
 わたくしたちのこどもにつたえる
 わたくしたちのちちははも
 わたくしたちのように
 この湖の蟹をとらえ
 あの山をこえ
 ひとにぎりの米と塩をもちかえり
 わたくしたちのために
 熱いお粥をたいてくれたのだった

 わたくしたちはやがてまた
 わたくしたちのちちははのように
 痩せほそったちいさなからだを
 かるく
 かるく
 湖にすてにゆくだろう
 そしてわたくしたちのぬけがらを
 蟹はあとかたもなく食いつくすだろう
 むかし
 わたくしたちのちちははのぬけがらを
 あとかたもなく食いつくしたように

 それはわたくしたちのねがいである

 こどもたちが寝いると
 わたくしたちは小屋をぬけだし
 湖に舟をうかべる
 湖の上はうすらあかるく
 わたくしたちはふるえながら
 やさしく
 くるしく
 むつびあう



終りのない地平     谷川俊太郎
北海道という土地で、私は生まれて初めて地平線を見た。そしてそこへ消え去る一本のまっすぐな道を見た。そのときの圧倒的な広さの感覚は私を一瞬にして「日本」から解き放って、ここは日本ではない、どこか別の土地だと私は思った。町へ入れば人々はみな日本語を話している、だが私の嗅覚は空気に何かちがう匂いをかぎとっていた。そして私の耳は無音の音楽を聞いた。三味線でもなく琴でもない音楽、あとになってその幻の音楽にもっとも近い音を、私はアイヌのムックリとリムセの歌声の中に聞きとったような気がしたのだが……

   *

明けがたの霧が苔のまつ毛に
夜の哀しみのあとの涙を残した
おぼつかなげにその上をたどる
仲間にはぐれた一匹の蟻へと
青空は見えないほほえみをひろげる

落葉松の根は目に見えぬ速度で
火山礫の間を貫いて伸びつづけ
陽光に透き通る卵の内部で
カケスの雛が身じろぐとき
野兎の耳は怯えたように立つ

どんな地図にも記されることのない
揺れ動く生命のふるえる細部を
終りのない地平線が抱きとっている
その外へ歩み出ることを
どうして人だけが夢見るのだろう

   *

ウエラマス(互いに好ましく思う)
学者の勤勉と誠実が救い上げたひとつの語が
分厚い辞書の一頁に残っている
ひとけのない博物館の
ガラスケースの中の土器の破片のように
その言葉がむかしひとりの若者の心と体に
どんなみずみずしさで生きていたのか
もう私たちに知るよしもない
その言葉が雪明りの夜の中で
どんな歓びとともに囁かれたのか
そのときの唇と舌と手の動きを
もう私たちは思い起すことができない
大地はけものらの血とともに
草木の種子や腐葉とともに
失われた人間の魂をもまた
幾世代にもわたって養っているのか

   *

大きな丼いっぱいの
とりたてのウニを食べた
おだやかな跑足で若草の上を駆け
立ち止まり一枚の優雅な絵となる
幼いサラブレッドを見た

大地から湧き出たばかりの
薄緑いろのアスパラガスを食べた
顔にいれずみを残し
内に秘めたもう無用となった知恵を悲しみ
熊を彫る老いたアイヌを見た

もうもうたる湯気にむせながら
にぎやかな街でラーメンを食べた
テレビの画面に
千キロを距てて一瞬のうちにとどく
見なれたコメディアンのしかめ面を見た

   *

降りしきる雪ですら耳を澄ませば
私たちに語りかけてくる
氷り始める海の深みで呻くのは誰か

村と村を結ぶ一条の電線ですら
微風に歌っている
せせらぎの底で呟く声は何か

大地は限りない言葉をもっている
ゆるやかな丘の物語り
烈しい雷鳴の叫び

畏れを抱きつつ沈黙するとき
人は聞きとる
いつまでも新しい生と死のリフレインを



   * [ポケット詩集] 田中和雄 編

「I was born」吉野弘・「伝説」会田綱雄は、『ポケット詩集』田中和雄 編 (童話屋 1998)から、『終りのない地平』谷川俊太郎は、『手紙』谷川俊太郎 (集英社 1984)から、引用しました。



音楽:「Music for the Native Americans」 Robbie Robertson & the Red Road Ensemble

   * [Music for the Native Americans] Robbie Robertson & the Red Road Ensemble



 「田原書店ノマド」は、ブックスボックス/田原書店の田原ヒロアキ * が担当する、音と言葉の情報番組。
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20080805 田原書店ノマド・「手で作る本」 封筒つづりの本・オヤヂによるオヤヂのオヤヂのための音楽

 毎週火曜日・午前十時半は、ブックスボックス 田原ヒロアキの、FMアップル「田原書店ノマド」の始まる時間。
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スタジオ内。右手に田原の手製「封筒つづりの本」。左手に参考書、山崎曜 『手で作る本』。

 2008年8月2日の放送は、山崎曜さんの本 『手で作る本』と、それを参考にして田原が実際に作った「封筒つづりの本・利尻島植物標本入り」を紹介。曲は、オヤヂ臭く、オヤヂ臭い(?)スティーリー・ダンの2曲をお届けしました。

   * [手で作る本] 山崎曜



タイム・テーブル

 10:30~10:35 「この一週間」 コーナー
  北海道の暑さと内地の暑さの違いの話。

   
田原の手製「封筒つづりの本・利尻島植物標本入り」近影
 
 10:35~10:40 一曲目 STEELY DAN 「HEY NINETEEN」 CD 『A DECADE OF STEELY DAN (THE BEST OF)』 より

   * [A Decade of Steely Dan [Best of]] Steely Dan

 10:40~10:50 話

  ・田原が久々に作った手製本は、「封筒つづりの本」―十枚の封筒の中には、ちょうど去年の今ごろ利尻島で採集した植物の標本が(家の近所で集めたもので、国立公園内で採ったものではありません、念のため)―リシリヒナゲシ・イブキジャコウソウ・エゾヨモギギク・ハマエンドウ・ツリガネニンジン・エゾカワラナデシコ・エゾトウヒレン・アキノキリンソウ・イワベンケイ・キタノコギリソウ

  ・参考書は、山崎曜さんの『手で作る本』。
   懇切丁寧で、アイデアに溢れた、その本自体もそこから造られる本もおしゃれな本。
   使えます。

  ・今後の展開・可能性・方針・目標
   ブックスボックス田原書店の、書店・出版社としての仕事の一つとして、手製本を継続して作っていきたい。
   手仕事(製本・紙・布等々)の勉強をしていくには最適。
   いずれ、オリジナルのアート作品としての本を数多く作って、個展も開きたい。

   
見開き 封筒の中のイブキジャコウソウ 田原の手製「封筒つづりの本・利尻島植物標本入り」近影

 10:50~10:55 二曲目 STEELY DAN 「DO IT AGAIN」 CD 『A DECADE OF STEELY DAN (THE BEST OF)』 より 

 10:55~11:00 「お知らせ」 コーナー

   
封筒から出して見たツリガネニンジンの標本 田原の手製「封筒つづりの本・利尻島植物標本入り」近影



 「田原書店ノマド」は、ブックスボックス/田原書店の田原ヒロアキ * が担当する、音と言葉の情報番組。
 毎週火曜日午前十時半から。

 インターネットで聞けます(見られます):
  http://www.channel-apple2.com/streaming_apple.html *

 出演:田原ヒロアキ@ブックスボックス
  福津京子さん:http://www.fukutsu.net/ *

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20080729 田原書店ノマド・もうどうにもとモナない!・竹内まりやの暗い不倫の歌(曲調はごく明るい)

 毎週火曜日・午前十時半は、ブックスボックス 田原ヒロアキの、FMアップル「田原書店ノマド」の始まる時間。
 インターネットで聞けます(見られます) : http://www.channel-apple2.com/streaming_apple.html

 2008年7月29日の放送は、「どうにもとまらない」山本モナさんの行動と今後について、妻子持ちの田原と、人妻の福津さんが語り合いました。曲は、家庭円満・仕事順調の究極の勝ち組なのに、妙に泥沼な不倫の歌も多い竹内まりやさんの、その不倫の歌(曲調は極めて「明るい」)を特集しました。

 山本モナ 内田恭子 山口美沙 @ YouTube
 



タイム・テーブル

 10:30~10:34 「この一週間」 コーナー
  26日、マウンテンバイクによる「支笏湖攻め」成功の話。

   
7月26日、午後一時。支笏湖湖畔にて。湖の向うに見えるのは、風不死岳?樽前山?
 
 10:34~10:38 一曲目 竹内まりや 「恋の嵐」 CD 『Impressions』 より

   * [Impressions] 竹内まりや  


 10:38~10:42 話・その一
  人間はなぜ同じ過ちを繰り返すのか?


 10:42~10:46 二曲目 竹内まりや 「マンハッタン・キス」 CD 『Impressions』 より 


 10:46~10:50 話・その二
  山本モナに、また同じ過ちを繰り返すチャンスは訪れるのか?


 10:50~10:54 三曲目 竹内まりや 「純愛ラプソディ」 CD 『Impressions』 より 


 10:54~11:00 「お知らせ」 コーナー

   
スタジオ内。壁に貼ってある「利尻山十六景」の前で。田原の帰郷は、8月8日から12日まで。

   
放送終了後、札幌中心部へ。法務局・S堂書店・一條商店、と商用逍遥。



 「田原書店ノマド」は、ブックスボックス/田原書店の田原ヒロアキ * が担当する、音と言葉の情報番組。
 毎週火曜日午前十時半から。

 インターネットで聞けます(見られます):
  http://www.channel-apple2.com/streaming_apple.html *

 出演:田原ヒロアキ@ブックスボックス
  福津京子さん:http://www.fukutsu.net/ *

 どうぞお楽しみください!

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